鉄筋コンクリート造や鉄骨造の梁貫通孔については、大きさ・位置の制限や補強要領については学会基準に明確に記されています。
一方で木造については梁の切欠き制限については「木質構造設計規準・同解説」(日本建築学会)などに記載されていますが、梁貫通孔の記載はありません。「枠組壁工法建築物設計の手引」(日本ツーバイフォー建築協会)の『根太等の横架材』の項目に参考になる目安が記載されていますのでここではこちらに即して解説します。
梁貫通孔を設置して良いのは、節や割れがなく断面欠損のない応力の小さな位置で、梁の上下1/3は避け、中央1/3の範囲とします。径は梁せい1/4以下とします。1/4とした時の断面性能は、欠損なしに比べて断面2次モーメントで96%、断面係数で89%まで低減されます。また、製材特融の繊維方向に沿った割裂が貫通孔(断面欠損部分)から水平方向に発生した場合の断面性能の減少を試算すると、断面2次モーメントで25%、断面係数で50%に低減され非常に危険な状況となります。この場合貫通孔廻りには割裂が発生しないようにプレートなどによる補強を考える必要があります。
上記はあくまで標準的に設置して良い位置になります。架構形式・応力状態・材料の良否などによっては判断も大きく変わるので、それらに応じて適切な判断をすることが必要です。
なお木壁の貫通孔の制限については以下の記事で解説しています。
[参考記事]木壁に空けられる開口の大きさの制限について