割裂きとは木材が横引張力やせん断力により繊維方向に沿って引き裂かれる破壊現象です。割裂きは鉄骨やコンクリートにはない木特有の破壊性状であり、引張側に切り欠きがある場合に生じやすい現象です。ここでは切り欠きがある木部材の耐力式について解説します。
切り欠きがある部材の曲げ応力度
曲げ応力度はM/Zeで表わされます。
ここで
M:設計用曲げモーメント
Ze:有効断面係数
となります。
有効断面係数は圧縮側に切り欠きがある場合と引張側に切り欠きがある場合とで算出方法が異なります。
曲げ材の最大曲げモーメント付近に切り欠きのある場合、有効な断面係数Zeとして圧縮側の切り欠きに対しては正味断面の断面係数Z0をとりますが、引張側の切り欠きに対しては正味断面より小さくとる必要があります。これは木材の引張側に切り欠きがあると、応力集中によって以下図のように曲げて折れる前に材が割裂するからです。
圧縮側に切り欠きがある場合
圧縮側に切り欠きがある場合は切り欠きを除いた正味断面係数がそのまま有効断面係数Zeとなります。
引張側に切り欠きがある場合
製材などの割裂きの影響が大きい材料
切り欠きは梁せいの1/3以下に制限されています。
Ze=0.45×正味断面係数
となります。
正味断面係数は上図のh’を用いて計算します。
集成材・単板積層材(積層数10以上)のように割裂きの影響が小さい材料
切り欠きは梁せいの1/4以下に制限されています。
Ze=0.60×正味断面係数
となります。
正味断面係数は上図のh’を用いて計算します。
切り欠きがある部材のせん断応力度
せん断応力度は
α×Q/Aeで表わされます。
ここで
α:断面形状で決まる値で長方形の場合1.5
Q:せん断力
Ae:有効断面積
となります。
材の下面から支持される梁では、せん断面に圧縮力が作用して材のせん断耐力を増加させるので、せん断破壊を起こすことはほとんどありません。しかし、逆にせん断面に引張力(引き裂き)を伴うような場合は危険で、支持点下端に切り欠きのある場合は十分注意する必要があります。支持点下端の切り欠きは梁せいの1/3を超えることは好ましくありません。その上で有効断面積Aeは正味断面積の2乗を全断面積で割った値とします。
圧縮側に切り欠きがある場合
Ae=正味断面積
となります。
正味断面積は上図のA0となります。
引張側に切り欠きがある場合
切り欠きは梁せいの1/3以下に制限されています。
Ae=正味断面積×正味断面積/全断面積
となります。
正味断面積は上図のA0となります。
まとめ
荷重を受ける木材の引張側に切り欠きがある場合、割裂きという破壊を起こす危険性があります。やむを得ず引張側に切り欠きを設ける場合は、梁せいに対する切り欠きの範囲を最小限にし、切り欠き寸法を考慮して応力度を算出し許容耐力を満足させる必要があります。