RCスラブやRC壁に生じたひび割れを補修する際の適切な補修材料について

RCスラブやRC壁にひび割れが発生した場合、ひび割れの発生原因やひび割れ幅等の状況に応じて適切な補修工法を選定する必要があります。
その補修工法に対して適切な補修材料を選定する必要があり、そのためにはひび割れ補修材料の特性を理解しておく必要があります。
ここではひび割れの補修に用いられる補修材料の特徴と、要求される性能に応じた適切な補修材料について解説します。
なお補修工法については以下の記事で解説しています。
【参照記事】RCスラブやRC壁に生じたひび割れの適切な補修工法について

目次

有機系ひび割れ補修材料

代表的な補修材料はエポキシ樹脂です。ひび割れ補修に用いるエポキシ樹脂は、強度対応型と変形対応型に分けられ、JIS A 6024(建築補修用注入エポキシ樹脂)では、エポキシ樹脂硬化体の引張破壊伸びで区分されています。

パテ状エポキシ樹脂表面シール工法

シール工法は表面処理工法の一種で、コンクリート表面のひび割れ幅が0.2mm程度未満の小さなひび割れ部の表面をシールする場合に用います。ひび割れ幅が挙動しないシール工法における補修材料はパテ状エポキシ樹脂が適当です。補修にあたっては、ひび割れを中心に50mm程度をワイヤブラシ等で表面を清掃し、シール材をパテベラ等で幅10mm、厚さ20m程度に塗布し平滑に仕上げます。

可撓性エポキシ樹脂表面シール工法

シール工法は表面処理工法の一種で、コンクリート表面のひび割れ幅が0.2mm程度未満の小さなひび割れ部の表面をシールする場合に用います。ひび割れが挙動する場合は可撓性エポキシ樹脂を用います。補修にあたっては、あらかじめプライマーを使用した上で、ひび割れを中心に50mm程度をワイヤブラシ等で表面を清掃し、シール材をパテベラ等で幅10mm、厚さ20m程度に塗布し平滑に仕上げます。

Uカット可撓性エポキシ樹脂充填工法

ひび割れをダイヤモンドカッターなどで U 字型にカッティングし、可撓性エポキシ樹脂を充填する工法です。 防水性能に優れ、ひび割れの動きにも追従しますが、Uカットした部分の美観性が損なわれることが欠点です。

Uカットシーリング材充填工法

ひび割れをダイヤモンドカッターなどで U 字型にカッティングし、弾性シーリング材を充填する工法です。可撓性エポキシ樹脂よりも防水性能や追随性能に優れるため、大きく変動するひび割れへの補修に適しています。
材料はJIS A 5758 (建築用シーリング材)に品質基準が定められている2成分型(反応硬化型)、1成分型(湿気硬化型、乾燥硬化型、非硬化型)のシーリング材が用いられます。2成分型にはシリコーン系、変成シリコーン系、ポリサルファイド型、アクリルウレタン型、ポリウレタン型の5種類があり、1成分型の湿気硬化型にはシリコーン系、変成シリコーン系、ポリサルファイド系、ポリウレタン系の4種類、乾燥硬化型にはエマルジョンタイプ、溶剤タイプの2種類、非硬化型には被膜形成タイプがあります。

硬質型エポキシ樹脂注入工法

強度対応型の引張破壊伸び10%以下のものを硬質型と分類されています。
接着強度、耐久性、美観性(仕上げ後)に優れていることが特徴です。

軟質型エポキシ樹脂注入工法

変形対応型の引張破壊伸び50%以上のものを軟質型と分類されています。
硬質型と同じく接着強度、耐久性、美観性(仕上げ後)に優れており、これに加え挙動追随性・防水性にも優れています。

発砲エポキシ樹脂注入工法

発泡エポキシ樹脂の自らの発泡圧により、エポキシ樹脂(主に軟質形)が自動的に注入される低圧樹脂注入工法です。他の材料に比べて接着強度は劣りますが、耐久性、挙動追随性・防水性、美観性において高い品質を有します。

無機系ひび割れ補修材料

セメント系及びポリマーセメント系補修材料があります。ポリマーセメント系補修材料には、最大粒径が普通ポルトランドセメントの1/4程度の超微粒子セメントを水だけで混合するものと、エマルジョンで混合するものがあります。日本建築仕上材工業会のNSKS-003「補修用注入ポリマーセメントスラリー」に品質基準が定められています。

セメントスラリー工法

スラリーという超微粒子セメントをひび割れに注入する工法です。他の材料に比べて接着強度は劣り、挙動追随性・防水性が必要な部位には使用できませんが、耐久性、美観性において高い品質を有します。

Uカットポリマーセメントモルタル充填工法

10mm程度の溝を構成する形でU字カットを行い、その部分にプライマーを塗布しポリマーセメントにて充填する工法です。
挙動追随性・防水性が必要な部位には使用できませんが高い耐久性を有します。

浸透性給水防止剤塗布工法

ひび割れあるいはコンクリート表面から浸透し、浸透した部分の表面張力を変化させ防水性を向上させる材料でシリコーン系と非シリコーン系があります。
JIS A 6909(建築用仕上げ塗材)に品質基準が定められています。
挙動追随性・防水性が必要な部位には使用できませんが高い美観性を有します。
また注入工法のような注入器具の取り付けが不要なため施工日数及び工具費用の削減ができます。

浸透性自己修復剤塗布工法

ひび割れあるいはコンクリート表面から浸透し、毛細管現象によりひび割れに自己浸透して充填する工法です。
挙動追随性・防水性が必要な部位には使用できませんが高い美観性、耐久性を有します。
また注入工法のような注入器具の取り付けが不要なため施工日数及び工具費用の削減ができます。

補修材料のまとめ

以上までに解説した補修材料を、要求される性能に応じて比較検討したものの一覧を以下に記します。

工法の種類一体性回復・接着強度耐久性(日射・熱変動等に対して)挙動追随性・防水性美観性(仕上げ後)打ち放し面への適用
パテ状エポキシ樹脂表面シール工法表面処理工法不可
可撓性エポキシ樹脂表面シール工法表面処理工法不可
エポキシ樹脂注入工法(硬質型)注入工法
エポキシ樹脂注入工法(軟質型)注入工法
発泡エポキシ樹脂注入工法注入工法
セメントスラリー工法注入工法
Uカット可撓性エポキシ樹脂充填工法充填工法不可
Uカットシーリング充填工法充填工法不可
Uカットポリマーセメントモルタル充填工法充填工法不可
浸透性吸水防止剤塗布工法その他の工法
浸透性自己修復剤塗布工法その他の工法
要求される性能に応じた適用の目安
 ◎:最適である
 〇:優れている
△:やや劣る
  -:適用できない

まとめ

RCスラブやRC壁のひび割れの補修材料について解説しました。
補修材料はJISなどのよる適切な試験方法や、使用実績あるいは信用できる資料によって、性質や性能が確かめられているものを使用する必要があります。
また補修箇所に要求される性能に応じて適切な材料を選択することが重要です。

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