太陽の光から電気を作り出す太陽光発電は、環境負荷が低く注目されているシステムです。近年では、大規模なソーラー発電をおこなう法人向けから一般家庭用までさまざまなタイプの太陽光発電設備が販売されています。これらの太陽光発電設備は、税法で定められた耐用年数が決まっており、会計処理では減価償却も可能です。
当記事では太陽光発電施設の耐用年数について解説し、減価償却の計算方法など税制面において考慮すべきことを紹介します。
太陽光発電設備の耐用年数とは
さまざまな機械や設備には、設備の寿命を表した数値があります。これら機械や設備の寿命は「耐用年数」とよばれ、広く一般的に使用されています。耐用年数についてはいくつかのバリエーションがあり、設備や機械の実質的な寿命を表した耐用年数や、会計上で使われる法定耐用年数などが存在します。太陽光発電設備にも耐用年数が存在しており、状況によってそれぞれの表現が用いられています。
法定耐用年数について
一般的な「耐用年数」には、会計上の計算と納税基準としての法定耐用年数と、それとは別に実際の製品寿命を耐用年数と言い表す場合があります。法定耐用年数と実際の耐用年数は比例しないケースも多く、全くの別物と考えてよいでしょう。
法定耐用年数は国の税法によって定められており、その対象は建物や建物に付属する設備、機械、車両、工具、生物などが含まれます。法定耐用年数の一例としては、木造モルタル住宅は20年、普通自動車が6年、パソコンは4年などが挙げられます。そして、太陽光発電設備の法定耐用年数は17年となっています。
実際の耐用年数は
法定耐用年数は国が定めた税務上の基準値ですが、実際に稼働させた場合と比較して短めに設定されている場合があります。一般的な太陽光パネルにおける実際の製品寿命は、法定耐用年数の17年を上回ることが多く、30年以上の稼働実例もあります。また、今後の技術向上によってはさらに長い寿命が期待できます。
パワーコンディショナーの寿命
ソーラーパネルから発電された電気を利用するためには、変換機器である「パワーコンディショナー」を経由する必要があります。パワーコンディショナーには常時稼働するパーツが多く、発熱や振動があります。その結果、パワーコンディショナーはソーラーパネルと比較して寿命が短くなる傾向にあります。設置場所やメンテナンスの頻度にもよりますが、パワーコンディショナーの寿命はおよそ10〜15年程度であることが一般的です。
太陽光発電設備の耐用年数を伸ばすには
太陽光発電設備は屋外に設置するので、強い日差しや風雨にさらされることになります。その結果として設備は劣化し一定の期間で寿命を迎えますが、できることならなるべく長い期間稼働させたいところです。では、太陽光発電設備の実質的な耐用年数を伸ばすにはどうすればよいのでしょうか?
設備劣化の原因を探る
太陽光発電設備は法定耐用年数が17年に設定されており、実質的な寿命として20年以上はもつといわれています。時間の経過と共に設備が経年劣化していくのは仕方がありませんが、それ以外の理由が原因で太陽光発電設備の劣化が急速に進んでしまうケースもあります。太陽光発電設備が劣化する原因を以下に解説します。
ホットスポット
太陽光発電設備が劣化する原因の代表的なものに「ホットスポット」の発生があります。ホットスポットとは、パネルに一部分だけ熱が生じる現象で、パネル表面の汚れや樹木、建造物の影、回路や配線の不備などにより発生します。ホットスポットが発生すると太陽光発電設備の発電量が低下し、最悪の場合は火災が起きるリスクもあります。
層間剝離
「層間剥離」も太陽光発電設備の劣化の原因になります。層間剥離とは、ガラス面やシートなどで多層構造となっているソーラーパネル内に、水分や空気が侵入することで起こります。層間剥離が起こった部分は発電ができず、また、周囲の剥離していない箇所からの発電量も減少してしまいます。その結果として各所に負荷がかかるようになり、設備の劣化を助長する恐れがあります。
そのほかの劣化原因
ホットスポットや層間剝離のほかにも、太陽光発電設備を劣化させる原因があります。太陽光発電設備のソーラーパネルは、上空を遮ってしまうと発電効率が下がるためカバーなどを設置できません。したがって空から何らかの飛来物があれば、傷がついてしまう可能性があります。
また、設置場所の環境要因も太陽光発電設備を劣化させる原因になります。海が近い場所では、塩分を含んだ海風で設備の劣化が早まります。そのほかに、台風や積雪が多い地域でも、太陽光発電設備の劣化スピードは早まる傾向にあります。
設備劣化の対策をたてる
太陽光発電設備には、ホットスポットや層間剝離など実質的な耐用年数を減らすさまざまな要因があります。これら設備劣化の対策としては、異常を早期発見して、パネルの修理や交換をおこなうことが挙げられます。また、太陽光発電設備を設置したあとも、点検やメンテナンスをこまめにおこなうことが重要です。これらのことをふまえると、設備を購入する際にアフターサービスや保証体制がしっかりしている業者を選択するとよいでしょう。
寿命を考えて設備を購入
太陽光発電設備は、パネルを屋外に設置するため設備の劣化が避けられません。その対策として、設備を購入する業者を慎重に選ぶことが挙げられます。太陽光発電設備を長い期間運用していくためには、日常的なチェックやメンテナンスも欠かせません。販売業者によってメンテナンスやアフターフォローの体制には違いがありますので、事前によく確認しておきましょう。
また、万が一の故障に備えて保険に加入しておくこともおすすめします。太陽光発電設備の保険では、地震や水害など想定される災害をカバーしているものが多くあります。さらに設備を修理している間の売電保証などのオプションをつけられるものもあるので、保険商品もチェックしておくとよいでしょう。
太陽光発電設備の会計処理
太陽光発電設備の導入は、運用の規模にもよりますがそれなりの費用がかかります。特に事業として太陽光発電設備を導入するのであれば、必要経費として計上し、可能な限り節税をしたいところです。ここからは法廷耐用年数をふまえて、太陽光発電設備の会計処理について解説します。
太陽光発電設備は減価償却できる
時間の経過と共に資産の価値が低下する建物や設備は、会計上で「減価償却資産」に分類されます。減価償却資産は、取得費用を分割して毎年の経費として計上することになっています。
太陽光発電設備も法定耐用年数が定められた減価償却資産として扱われるので、確定申告の際は減価償却費をして経費計上する必要があります。
太陽光発電設備の償却計算
太陽光発電設備の会計処理では減価償却が必要です。減価償却資産として経費を計上するためには定められた計算式を用い、毎年の償却金額を算出します。減価償却の計算式には以下に紹介する2種類の計算方法があります。
定額法
定額法は、償却資産の耐用年数に応じた均等額を毎年経費として計上する償却方法です。太陽光発電設備の耐用年数は17年なので、定額法では購入金額を17分割した金額が毎年の経費として計上できます。
定率法
定率法は、毎年計算した割合で資産を償却する方法です。定率法では設備の導入当初に多くの額を経費計上でき、年数を負うごとに償却できる金額が減っていきます。
定率法は導入初期の利益が圧縮でき、節税効果も高いのですが、毎年の計算がやや煩雑になります。
太陽光発電の償却計算に適しているのは?
太陽光発電設備の導入費用を減価償却するにあたっては、定額法と定率法のどちらを使うのがよいのでしょうか?
太陽光発電設備の導入には個人や企業でさまざまな状況がありますが、大別すると個人であれば定額法、法人には定率法が適しています。減価償却の計算は定率法のほうが減税率が高くなる傾向があるので、比較的大きな金額を使う法人にはこちらが向いています。対して、定額法は計算がしやすく個人向けといえます。
定額法も定率法も一度確定したら、その後3年間は変更できないので、太陽光発電設備の運用計画に合わせて計算方法を決めましょう。
太陽光発電設備の導入は耐用年数を考慮しよう
太陽光発電設備には17年の法定耐用年数が決められていますが、実際にはそれ以上の期間に渡って稼働できることが一般的です。太陽光発電設備を稼働させる場合、コストパフォーマンスをよく考えて最適化した運用を心がけたいところです。太陽光発電設備の導入にはそれなりの経費がかかるので、実質的な耐用年数と費用対効果や、導入後の税金対策についても前もって理解しておきましょう。