再現期間とは?具体的な計算例を交えて解説

自然災害は繰り返し発生することが知られています。自然災害の正確な予知は不可能に近い現状の中で、自然災害がどのくらいの程度のものでどのくらいの確率で発生するかということを表わしたものとして「自然災害リスク評価」という概念があります。この確率の表現を別の形で表わしたものが「再現期間」と呼ばれています。
ここでは再現期間の定義について解説します。

目次

再現期間の定義

再現期間とは、ある事象が平均的に何年に一度程度起きるかを表したものです。
単位の期間における最大値が、独立で同じ確率分布に従うと考えられる時、ある最大値の値XRを超える確率、すなわち超過確率P(XR)に対して、その逆数を再現と定義すると非常に便利です。積雪量や強風などは特に年毎に繰り返されることと、気候の長期変動はそれほど明確に定量化できていないことから、年最大値が独立の確率分布でモデル化できると仮定することが多いです。
ある確率でその値を超えるのであれば、どんなに小さな確率でもいつかはその値を超えることがあります。すなわち、期間を無限大にすれば確率は1になる。このことを式で確認してみます。

1年目にある値を超える確率をPとします。
2年目に、初めてある値を超える確率は、1年目に超えないでかつ2年目に超える確率であるから、(1-P)×Pとなります。
3年目に、初めてある値を超える確率は、同様に(1-P)×(1-P)×P
これを繰り返し、無限大の期間まで考えて、初めて超える確率を加え合わせます。するとそれは1より小さい比(1-P)を持つ等比級数となって収束し、
P+P×(1-P) +P×(1-P)×(1-P)+…=P×1/(1-(1-P))=1 …(1)
となり、無限大の期間ではある値が大きくても、超える確率は1になることが確認できます。次に、何年で初めて超えるかについての期待値を計算してみます。

次に何年で初めて超えるかについての期待値を計算してみましょう。それをRとおいて期待値を求める式をたてます。それをRとおいて期待値を求める式たてます。i年目に初めて超える確率は分かっているので、その年数に確率を乗じて無限期間までの和を取ります。すなわち、
R=1×P+2×P×(1-P)+3×P(1-P)^2+…+i×P×(1-P)^i …(2)
となります。
このRを求めるにあたり(2)式の両辺に(1-P)を乗じます。
R(1-P)=P×(1-P)+2×P×(1-P)^2+3×P×(1-P)^3+…i×P×(1-P)^(i+1)+…(3)
(2)式から(3)式を各辺ごとに引くと
RP= P+P×(1-P) +P×(1-P)×(1-P)+…
となり右辺は(1)式と同じとなり1に収束します。
よって
R=1/Pが得られます。

具体的な再現期間の計算例

以下具体的な事象の再現期間の算出例を記します。

50年で10%を超える確率で生じる事象の再現期間

1年間で発生する確率をP1とすると、1年間で発生しない確率は(1-P1)、50年間で発生しない確率は(1-P1)^50となり、50年間で発生する確率はP50=1-(1-P1)^ 50となります。50年間で発生する確率10%の場合、P50=0.1ですから、P50=1-(1-P1)^ 50=0.1より
(1-P1)^ 50=0.9
→P1=1-0.9^(1/50)=0.002105となります。
再現期間は1年間で発生する確率の逆数なので、P1の逆数を取ってみると、この場合の再現期間は1/0.002105=475年となります。

50年で10%を超える確率で生じる事象の再現期間

1年間で発生する確率をP1とすると、1年間で発生しない確率は(1-P1)、50年間で発生しない確率は(1-P1)^50となり、50年間で発生する確率はP50=1-(1-P1)^ 50となります。50年間で発生する確率10%の場合、P50=0.1ですから、P50=1-(1-P1)^ 50=0.1より
(1-P1)^ 50=0.9
→P1=1-0.9^(1/50)=0.002105となります。
再現期間は1年間で発生する確率の逆数なので、P1の逆数を取ってみると、この場合の再現期間は1/0.002105=475年となります。

20年で5%を超える確率で生じる事象の再現期間

1年間で発生する確率をP1とすると、1年間で発生しない確率は(1-P1)、20年間で発生しない確率は(1-P1)^20となり、20年間で発生する確率はP20=1-(1-P1)^ 20となります。20年間で発生する確率5%の場合、P20=0.05ですから、P20=1-(1-P1)^ 20=0.05より
(1-P1)^ 20=0.95
→P1=1-0.95^(1/20)=0.002561となります。
再現期間は1年間で発生する確率の逆数なので、P1の逆数を取ってみると、この場合の再現期間は1/0.002561=390年となります。

地震動の設計用再現期間

耐震設計で用いられるせん断力係数は、構造物に損傷が生じない限界に対して0.2の値が定められています。又建築物では1981年以降、保有水平耐力設計に対してせん断力係数1.0が用いられています。地表面加速度が比較的短周期領域で建物の応答としては2.5倍程度になると仮定すると、上記のせん断力係数に相当する地表面加速度はそれぞれ
0.08m/s2(80gal相当)、0.4m/s2(400gal相当)になります。
これらの地表面加速度に対する再現期間として、損傷限界に対して20~30年、保有耐力限界に対して500~600年程度が対応しています。
2000年から新しく施行された建築基準法施行令・告示では、強風や積雪に対してその安全限界が再現期間500年の荷重に対して検討するように規定されており、地震動についても同様の値となっていることが分かります。

まとめ

再現期間の定義と超過確率との関係について解説しました。
将来起こりうる自然災害リスクを確率的に捉えて適切な対処をすることが重要です。

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