収縮ひび割れの抑制のための誘発目地の効果的な入れ方について

誘発目地とは、コンクリートのひび割れを事前に想定した位置に発生させるために設ける目地(断面欠損部分)のことを指します。本記事では、コンクリート躯体の完成後においてこの誘発目地部分にひび割れが発生するための効果的な入れ方について解説します。

目次

誘発目地の深さ(欠損率)は、施工時の実壁厚に対して1/5以上とし、かつ誘発目地の間隔は3m以下とする

ひび割れの誘発目地への集中率は、欠損率を1/5以上とし、目地間隔を3m以下とすることで高くなることが示されています。また鉄筋比が0.4%~0.5%程度の一般の壁ではひび割れが2~3本発生することが多いので、以下に示すような柱・梁・目地に囲まれた面積が25㎡以下、辺長比(l/h)が1.25以下となる目地配置とするのが望ましいです。辺長比が1.0以下、目地間隔は2m程度以下とするとさらに効果が上がります。

誘発目地の配置概要

以下はスパン6mの壁で、辺長比を1.25以下とする誘発目地の配置例です。誘発目地と両柱際と壁中央に設けた場合及び均等に3本入れた場合は、辺長比がほぼ1.0以下となります。ただし住宅で梁下が2.4m未満の壁の場合、目地間隔を3.0mとすると辺長比が1.25を超えますが一般的には許容範囲です。このような対策を講じることで収縮ひび割れの発生そのものを抑制することが可能となります。

1スパンに均等に2本入れる場合
柱際とスパン中央に入れる場合
1スパンに均等に3本入れる場合

意匠上、目地間隔が大きくなってしまう場合は、耐震スリットを利用したり、目地位置における鉄筋の半数程度を切断することで、ひび割れ発生本数の低減を図る方法もあります。なお誘発目地は壁の両面から書き込んで目地を形成すること、屋外側の目地にはシーリングを行うことが原則です。
誘発目地の欠損率は1/5以上としましたが、目地底でもかぶり厚を確保することは必要ですので1/5以上となるような欠損率の確保には工夫が必要です。以下図は壁厚200mm、欠損率1/5の誘発目地の例になります。目地底以外のかぶり厚は60mmとなっておりまして、これ以上欠損率を大きくするとダブル配筋の間隔が狭くなりかぶり厚が60mmを超えひび割れ幅を抑制する観点からも不利になります。

外壁の誘発目地の例

耐力壁に誘発目地を入れる場合は、その構造と配置について十分に検討する

耐力壁に誘発目地を設ける場合は、配筋量が多く、鉄筋の切断もできないので目地間隔を狭めて誘発効果を高めることが望ましいです。

誘発目地は、部材間にまたがる連続性を考慮して適切に配置する

誘発目地は当該部材だけでなく、その部材に連続する部材についても適切に配置する必要があります。コンクリートの目地位置と仕上タイル目地位置を合わせるのは当然ですが、例えば手摺り壁付き片持ちスラブなどの場合、手摺り壁の誘発目地位置と合わせてスラブにも目地を設けないと、予想しない部分のスラブにもひび割れが誘発される危険があります。またパラペットの場合立ち上がり部分だけでなく、天端にも誘発目地を廻し、シーリングを行う必要があります。

開口端部に誘発目地を設ける場合で、開口辺にサッシ取り付け用の欠き込みがある場合には、目地部分以外に斜めひび割れが生じる場合が多いので、目地配置を十分検討する

開口端部に誘発目地を設けているにも関わらず、開口辺にサッシ取り付け用の欠き込みがある場合は、以下のように開口隅部の斜めひび割れが生じる場合があります。

開口端部の誘発目地の不具合例

この場合は以下のA,Bのような目地配置になっている場合が多いです。そこで以下のA,Dにするか、C,Eに配置することが望ましいです。ただしC,Eに配置した場合には、Cが欠き込み部分のあごに近すぎる場合はあごが剥落しやすくなる恐れがあり、一方であごから遠すぎる場合は開口隅部と目地の間にひび割れが発生するおそれがあるので、A,Dの誘発目地を設けることが最も推奨されます。

開口端部の目地間隔改善例

まとめ

収縮ひび割れの抑制のための誘発目地の効果的な入れ方について解説しました。
ただ全ての状況において今回解説したような誘発目地を入れる必要は必ずしもありません。
例えば室内壁で壁の表裏に仕上げを施しコンクリートの素地が見えないケースでは誘発目地は不要であり、またむやみに深い目地をとって耐震性が損なわれることがあってもいけません。建物の要求性能をふまえた上で適切な誘発目地の計画を立てることが重要です。

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