木造の建物において、設備配管やコンセント等の設置に伴い木壁に開口を空ける必要が出てくるケースがあります。ここでは「在来軸組工法住宅の許容応力度設計」(2017年版)を参考に、開口部を設けない場合と同等以上の剛性及び許容せん断力を有するものとして、開口部に該当しないものとして取り扱うことができる小開口の仕様について解説します。
なお梁に設ける貫通孔の制限については以下の記事で解説しています。
[参考記事]木梁の梁貫通孔の大きさ・位置の制限について
補強が不要な開口
非耐力壁
非耐力壁は耐震上有効な耐力壁として考慮されていないので基本的には補強不要です。ただし非構造壁も建物全体の余力として耐震性能を期待している場合などは、補強を行うのが望ましいと言えます。
筋かいに貼られている壁
筋交いが耐震要素の建物において、筋交いに貼られている壁は原則耐力壁として考慮されていないので補強不要です。ただし筋交いと壁両方で壁倍率を期待している壁については当然補強が必要となります。
補強が必要な開口
面材貼り耐力壁については、剛性および耐力は面材の四周に打たれた釘のせん断によって決まるため、面材の中央部に小径の穴をあけてもほとんど影響はありません。しかし、穴の径が大きいと、終局時に穴の周囲から面材が割れたり局部座屈を生じたりするため、それを防ぐための受け材等の補強が必要になります。穴の径がさらに大きくなり面材の短辺幅の半分以上となると、補強をしても穴の横の面材の残った部分が細いため、面材がせん断力を十分伝達できなくなるおそれがあります。このような性状をふまえ、以下に記す補強を施す必要があります。
補強における注意点
現場によっては、本来必要な開口寸法よりも余分に壁が切り欠かれている場合があります。そのようなケースでは当然余分な切り欠きの外端の範囲(以下図の点線部分)が実質的な開口範囲となりますので、この寸法を元に上述の開口補強の判断を行う必要があります。
まとめ
木壁に空けられる開口の大きさについて解説してきました。適切な補強を施せば比較的大きな開口を空けることができることが分かると思います。現場においては設計上見込んでいる耐力壁を施工者と共有すること、壁に必要以上の切り欠きを設けないことが重要です。