RCスラブやRC壁にひび割れが発生した場合、ひび割れの発生原因やひび割れ幅等の状況に応じて適切な補修工法を選定する必要があります。
ここでは代表的な補修工法である
・弾性系の表面塗装にて対処する方法
・表面処理工法
・注入工法
・充填工法
・浸透性防水剤の塗布工法
の特徴について「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説」に記載の内容を参考に解説します。
弾性系の表面塗装にて対処
微細なひび割れ(一般に0.2mm未満)を補修する工法で、ひび割れを他の塗料よりも高い伸縮性(弾力性)を持ち下地のヒビ割れに対応することができる塗料にて塗装する工法です。
弾性塗料は一般的に塗料の原料となる樹脂に可塑剤と呼ばれる添加剤を入れることで伸縮機能を持たせています。
表面処理工法
微細なひび割れ(一般に0.2mm未満)を補修する工法で、ひび割れをひび割れの動きに追従できる表面被覆材や目地材で覆うことにより、漏水抵抗性、劣化抵抗性を向上させる方法です。「清掃→プライマー→塗布→絶縁材貼付→中塗→上塗」などの工程があり、コンクリート表面に被覆材で保護層を設ける工法です。貫通したひび割れで裏面の処理ができない場合には、被覆材の膨れなどが生じることがあるので注意が必要です。
注入工法
主として幅0.2mmを超えるひび割れに対して、ひび割れ内部に有機系又は無機系の補修材料を注入して漏水抵抗性、劣化抵抗性を向上させる方法です。注入工法には、手動式あるいは機械式注入工法と自動式低圧注入工法の2種類があります。
手動式あるいは機械式注入工法
ひび割れに注入パイプを取り付けてひび割れを補修する方法です。グリーンポンプを用いてひび割れに注入材料を注入する工法が手動式注入工法で、足踏み式ポンプやケミカルポンプなどの簡易な器具を使用して注入する工法が機械式注入工法です。
自動式低圧注入工法
ゴム、バネの復元力や空気圧を利用した専用の治具を使用して、注入圧力0.4N/mm2以下の低圧でひび割れに注入材料を注入する工法です。コンクリート内部のひび割れ幅が0.05mm程度の微細ひび割れまで注入可能です。
充填工法
幅0.5mm以上の比較的大きな幅のひび割れ、動きのあるひび割れの補修に適した工法です。ひび割れに沿って約10mm幅にコンクリートをU字にカットして、その部分に有機系あるいは無機系の補修材を充填する工法です。
浸透性防水剤の塗布工法
ひび割れ幅0.2mm以下のひび割れがコンクリート表面に多数発生している場合に、浸透性の防水剤を塗布してひび割れを補修する工法です。浸透性防水剤には、様々な種類のものがあります。
補修工法のまとめ
以上までに解説した補修工法を、補修目的やひび割れの大小別に応じて比較検討したものの一覧を以下に記します。鉄筋の腐食が見られる場合については、上記で解説した方法ではなくジャンカの補修のような形で対応する必要があります。
補修目的 | 鉄筋の腐食 | ひび割れ幅の変動 | ひび割れ幅(mm) | 弾性系の表面塗装 | 表面処理工法 | 注入工法 | 充填工法 | 浸透性防水剤の塗布 | その他 |
漏水抵抗性能 | なし | 小 | 0.2以下 | 〇 | △ | 〇 | |||
漏水抵抗性能 | なし | 小 | 0.2~1.0 | △ | 〇 | 〇 | |||
漏水抵抗性能 | なし | 大 | 0.2以下 | △ | 〇 | 〇 | |||
漏水抵抗性能 | なし | 大 | 0.2~1.0 | △ | △ | △ | |||
劣化抵抗性能 | あり | 小 | 0.2以下 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
劣化抵抗性能 | あり | 小 | 0.2~1.0 | △ | 〇 | 〇 | |||
劣化抵抗性能 | あり | 小 | 〇 | △ | |||||
劣化抵抗性能 | あり | 大 | 0.2以下 | △ | △ | 〇 | |||
劣化抵抗性能 | あり | 大 | 0.2~1.0 | △ | △ | 〇 | |||
劣化抵抗性能 | あり | 大 | 1.0以上 | △ | 〇 | ||||
劣化抵抗性能 | あり | - | △ | ● |
〇:適当と考えられる工法
△:条件によっては適当と考えられる工法
●:ひび割れの原因を除去する工法
まとめ
RCスラブやRC壁のひび割れの補修工法について解説しました。
ひび割れの程度、状況、不随する劣化の有無、進行性の有無、補修目的、施工環境(温度、湿度、施工部位の向き)などに応じて適切な工法を選択することが重要です。