コンクリートの配合と収縮ひび割れとの関連についてはまだ明らかになっていない点もありますが、コンクリートの使用場所・施工時期・施工方法などの諸条件を配慮の上、適切な配合計画を立てることが重要です。2006年に刊行された「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説」を参考に、配合計画において通常要求される性能を満足した上で、収縮ひび割れ抑制のために特に注意すべき点について解説します。
単位水量は180kg/m3以下とし、所要のワーカビリティが得られる範囲内でできるだけ小さくする
単位水量とブリーディングの量は非常に相関性が高く、ブリーディングの量を0.3cm3/cm2以下とするために「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説」では180kg/m3以下と定められています。
JASS5では乾燥収縮ひずみを800×10^-6以下にするためには単位水量を185kg/m3程度以下にする必要があるとしており、180kg/m3以下は乾燥収縮ひび割れに関してさらに安全側に設定したものです。ただし骨材の性状によっては単位水量を低減することによりワーカビリティが著しく悪くなる傾向があります。この場合は、ジャンカや分離といった施工不良が生じやすくなるため、ブリーディング量の設計値を満足する範囲で単位水量を再設定するか、骨材の種類を変更するなどの方法が必要です。
単位セメント量は270kg/m3以上450kg/m3以下とする
単位セメント量はコンクリートの乾燥収縮ひび割れの低減と水和熱による自己収縮ひび割れの観点から、極力少なくすることが望ましいです。しかし単位セメント量が少なすぎると、コンクリートのワーカビリティが著しく悪くなり、充填性も低下しコンクリートの仕上がり、水密性、耐久性などに悪影響を及ぼすので、「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説」では270kg/m3以上と定められています。一方で単位セメント量が多すぎる場合は、経済的に不利になるだけでなく、水和熱の増大によるコンクリートの温度ひび割れの危険性が増すのに加え、クリープや乾燥収縮ひび割れも大きくなる傾向にあります。よって最大値として450kg/m3が定められています。
単位粗骨材量はコンクリートに所要のワーカビリティが得られる範囲内で極力大きくする
骨材はセメントペーストの収縮変形を拘束するため、単位粗骨材はコンクリートの乾燥収縮ひずみの大小に大きく影響します。コンクリートのセメントペースト中に骨材粒子を分散させた2組の複合材料と仮定して検討した結果が数多く報告されており、いずれの結果も骨材の容積率の増大に伴うコンクリートの乾燥収縮ひずみの減少を現しています。単位粗骨材量を大きくすると、同一スランプ、同一水セメント比のもとでは、単位水量及び単位セメント量を小さくすることができ、その結果単位骨材量が増え、コンクリートの乾燥収縮ひずみを低減させることができます。
熱膨張係数が小さい粗骨材を用いる
コンクリートの温度上昇により温度ひずみ、自己収縮ひび割れが発生するので熱膨張係数が小さい粗骨材を使用すれば温度ひずみ、自己収縮ひび割れを軽減できます。
下記の記事にて、より詳しく記載しています。
コンクリートの収縮ひび割れは粗骨材の種類に作用される
細骨材率は大きすぎても小さすぎても不可
一般的に細骨材率が小さすぎる場合には、コンクリートは荒々しい状態となり、スランプが大きいと粗骨材とモルタルとが分離しやすくなり、分離したモルタルが多い箇所では乾燥収縮ひずみが大きくなります。一方細骨材率が大きすぎる場合には、単位水量及び単位セメント量を多く必要とし、粘性の大きい流動性の悪いコンクリートとなるだけでなく、乾燥収縮ひずみが増大する傾向にあります。なお一般的には粗骨材量を定めるのに単位粗骨材から容積の標準値を選択する方法をとっているため、細骨材率は自動的に決定されますが、試験練りを行う場合の配合の微調整には細骨材率を変化させるのが良いでしょう。
水セメント比は60%以下とする
水セメント比が乾燥収縮ひずみに及ぼす影響はこれまでの条件に比べると明確ではありませんが、水セメント比の小さいコンクリートほどセメントペーストの組織が緻密になるため耐久性は向上します。
よって「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説」では耐久性の十分な確保を意図して水セメント比は60%以下と定められています。
まとめ
収縮ひび割れを極力抑えるコンクリートの配合は、単位セメント量、単位水量、水セメント比、粗骨材の仕様を適切に設定することが重要だということを説明しました。
所定の強度やワーカビリティの確保だけでなく、収縮ひび割れを極力抑えることも考慮してコンクリートの配合計画を立てることが重要です。