木材における人工乾燥材と天然乾燥材について、それぞれの特徴について解説

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木材に乾燥が必要な理由

建築材料として使用する木材を十分乾燥させるのは、腐朽・蟻害による断面欠損の防止と、狂いや割れ、およびクリープ変形を抑制するためである。乾燥材と未乾燥材のクリープ変形に関する試験結果をみると、初期変形1に対して乾燥材は2.0~2.5倍、未乾燥材は3.5倍~4.0倍となっている。乾燥が不十分だと変形の増大率も高くなるということである。
この結果から、木造では長期荷重による変形増大係数を2.0として設計を行うという規定は乾燥材を前提としているということが分かります。ここで言う乾燥材の含水率とは15%(日本における平衡含水率)程度になります。

天然乾燥材と人工乾燥材

木材の乾燥方法は、大別すると天然乾燥と人工乾燥の二つに分けられます。天然乾燥は、丸太から大きめに製材した部材を積み上げて風通しの良い場所に置き、六か月程度時間をかけてゆっくり乾燥させる方法で、木材の表面が乾燥して干割れが発生した後に内部の水分が抜け出します。また、断面が大きくなると心部まで乾燥させることが難しくなるため、あらかじめ背割りを設けることもあります。

一方の人工乾燥は、人工的に熱を加えて温度や湿度を調整しながら木材を乾燥させるもので、様々な方法が開発されています。乾燥まで一週間から一か月程度を要します。人工乾燥は乾燥温度により、高温・中温・低温の3種類に分類されるが、温度が高い程乾燥は早くなります。また表面の割れがなく強度も高くなるため、現在人工乾燥の主流は高温乾燥です。
ところが高温乾燥を行うと、木材の表層部が固まった後に内部の水分が抜けていくため、内部に割れが生じやすくなります。最近はその他の乾燥方法と組み合わせるなどして内部割れを減らす技術も開発されていますが、今のところ、全ての人工乾燥材で問題が解決されているわけではありません。

割れの構造強度への影響

天然乾燥材の干割れ

天然乾燥材の干割れや背割りは、材を貫通した割れでなければ、木材の構造性能への影響はほとんどありません。しかし接合部(釘・ボルト・込み栓など)を割れの部分に打ち込んでしまうと接合部の耐力低下を招くことになるので施工には十分注意する必要があります。
また天然乾燥材は建て方時に平衡含水率(15%前後)まで乾燥させることが難しく、竣工後も徐々に乾燥していくため新たな干割れが発生したり、背割り部分が開いて仕上材に影響を及ぼすおそれがあります。天然乾燥材使用時は、これらの資質を踏まえて多少の乾燥収縮にも対応できるように、架構の組み方や仕上げへの配慮が必要になります。

高温乾燥材の内部割れ

一方高温乾燥材は建て方時までにほぼ平衡含水率に達しているため、加工精度が高く建築後の寸法変化も少ないです。また断面の外形が固定化しているので、曲げ強度も若干たかくなります。しかし、建物に使用されているときは、その固定化された外側部分を削り取って木材を組み合わせていくので、内部割れの個所とあいまって接合強度に影響を及ぼすおそれがあります。

まとめ

以上より天然乾燥材と人工乾燥材は木材の性質に違いがあることが分かります。人工乾燥材の中でも高温乾燥材は、表面の割れがなく強度も高くなるため主流となっていますが、高温乾燥材の内部割れは目視では発見できないので、接合部の設計には注意が必要です。

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