デッキ合成スラブを片持ちで出す場合の注意点について

通常デッキ合成スラブは両端支持の境界条件で使用されることが多いことと思います。ただ外壁との納まり上、鉄骨梁からデッキ合成スラブを片持ちで出す必要がある場合があります。ただ合成デッキプレートのメーカーの仕様書を見ても片持ちの出寸法の許容値は明確な記載がありません。ここではデッキ合成スラブを片持ちで出す場合の検討方法と注意点について解説します。

目次

引張側のコンクリートの応力度(長期)を0.12√Fc(N/mm2)以下に抑える

合成スラブが支持縁を超えてはね出す場合、はね出し部はリダンダンシーに乏しい構造であることを考え、コンクリートの引張応力度は、日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説(1999)」の8条の解説に記述してある曲げひび割れ時のコンクリート引張応力の下限値、0.38√Fc(N/mm2)に余裕度を3程度考えた値の0.12√Fc(N/mm2)で算定するのが適切です。
(合成スラブのQ&A|合成スラブ工業会)
http://www.gousei-slab.jp/q_a/qa_f/2f_06.html

この応力度は、コンクリートの設計基準強度が18~24 N/mm2の使用範囲であれば、令第91条に規定されているコンクリートの長期荷重に対する引張許容応力度(Fc/30かつ(0.49+Fc/100))より小さい数値となります。
(デッキプレート床構造設計・施工親準-2004第Ⅰ編5.3.3項)

短期においては上述の数値(0.12√Fc(N/mm2))の1.5倍である0.18√Fc(N/mm2)を許容耐力とする。

設計例

固定荷重1250N/㎡、積載荷重2900N/㎡、片持ち出寸法345mm、fc=21N/mm2
EZ50(t=1.2mm)、山上80mm
の場合の検討を行う。
デッキ合成スラブは山上80mm+50mmより平均105mm。
設計荷重は24×105+1250+2900=6670N/㎡
片持ち出寸法=345mmより作用する曲げモーメントは
6.67×0.3452/2=0.4kNm
引張側コンクリートの寄与を見込んだ等価断面係数は以下のカタログより2870000mm3

作用する応力度=400000/2870000=0.14N/nn2
許容曲げモーメントは0.55×2870000/106=1.58kNm
作用する応力度σb=0.14N/mm2
許容応力度=0.12×√21=0.55N/mm2より0.14N/mm2を上回るのでスラブは許容耐力を満足する。

片持ち部の変形(ハネ上リ)によりスラブと外壁の間に隙間を生じない納まりとする

片持ち部の変形(ハネ上リ)によりスラブと外壁の間に隙間を生じると火災発生時にこの隙間から火炎を通過する恐れがある。スラブと外壁の隙間には変形に対する追随性能がある耐火材、例えばロックウールや無機繊維発泡体をスキマなく詰め込む納まりとすることが必要である。

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