下図のような部分地下を有する建物の設計を行う場合、地震時にAゾーンの基礎とBゾーンの地下階及び基礎の分担せん断力をどのようにして決定するかということが、設計上の課題のひとつとなります。ここでは部分地下を有する建物のせん断力の分担方法について適切な手順を解説します。
構造モデルのAゾーンの支点をローラー支点、Bゾーンの支点をピン支点とする
Aゾーンの支点条件をピン支点とすると、地震力は全てAゾーンの基礎が分担することになり、Aゾーンにとっては安全側となるがBゾーンの地下および基礎にとっては危険側となります。
各ゾーンの地震時重量NA、NBを算出する
各節点の地震時重量を算出し、AゾーンとBゾーンそれぞれの範囲について地震時重量を合計します。
地上階のせん断力を算出する
一貫計算プログラムであれば、地上階のせん断力は自動的に算出された値を採用します。
Aゾーン支点が分担するせん断力QAを地震時重量比によって算出する
NA:Aゾーンの地震時重量
NB:Bゾーンの地震時重量
Q1:1階の層せん断力
ΔQ1:1階床・基礎の付加せん断力
とした場合QA=NA/(NA+NB)×(Q1+ΔQ1)
となります。
Bゾーン支点が分担するせん断力QBを算出する
QB=Q1+ΔQ1-QAとなります。
地下階のせん断力がQBとなるよう外力を設定する
1階の地震力作用重心位置に(-1)×QB/0.1の荷重を作用させれば、地震時において荷重作用方向とは逆にQBの力が作用するので、Bゾーン支点が分担するせん断力はQBとなります。以上の手順により部分地下を有する建物について、適切な地震力の分担が実現できます。
なお(-1)×QB/0.1の荷重を地震力作用重心位置から外れた位置に作用させると捩れ回転が生じるので注意が必要です。
まとめ
部分地下を有する建物のせん断力の分担方法について適切な手順を解説しました。ただし分担せん断力を地震時重量比で分担させるということは、AゾーンとBゾーンそれぞれに生じた地震力は各ゾーンの基礎で分担させることを前提としています。よって今回解説した方法は純ラーメン等せん断力の移行が少ない建物に適した方法であり、せん断力の移行が大きい建物についてはより詳細なモデル化が必要となります。