さまざまな震災を経験した日本では、耐震診断の需要が高まっています。東京直下型地震や南海トラフ地震などが心配される現代では、万が一震災に見舞われた際に所有する建物が倒壊しないかどうか頭を抱えている方も少なくありません。
耐震診断でリフォームや補強工事を検討する基準となるのが評点です。今回は「耐震診断の評点」や「相場」「耐震診断を受けるべき建物の参考例」を紹介します。耐震診断が気になっている方は、ぜひ参考にしてください。
耐震診断の評点について
耐震診断は知っているものの、示される評点の意味がよくわからないといった方も多いのではないでしょうか。建物の強度を知るためにも、まずは評点について理解しておくことが大切です。
耐震診断の評点についてわかりやすく解説します。
評点が示すのは建物の耐震強度
耐震診断の評点とは、建物の安全性を示す数値です。耐震診断は震度6強〜7程度の地震を想定して専門家が診断を行います。地震による振動や衝撃にどのくらい建物が耐えられるかを診断する1つの指針として理解しておきましょう。
耐震診断は木造と、鉄骨造や鉄筋コンクリート造で診断方法が異なります。木造の場合、「誰でもできるわが家の耐震診断」という簡易的な診断や、天井や壁を破壊せずに行う「一般診断法」で耐震診断を行うのが主流です。徹底的に耐震リフォームを行いたい方は、精密診断法を利用して建物の安全性を確かめましょう。
鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物の場合、1次、2次、3次の3つの診断法があります。数字が大きくなるにつれて耐震診断の精密度は上がるので、覚えておきましょう。
耐震診断の評点の基準
耐震診断の評点の結果は、以下の基準で判断します。
・評点0.7未満:倒壊する可能性が高い
・評点0.7〜1.0未満:倒壊する可能性あり
・評点1.0〜1.5未満:一応倒壊しない
・評点1.5以上:倒壊しない
建物の安全性を確保するためにも、耐震診断の評点は1.0以上は必要です。リフォームを検討している方は、評点1.0以上になるように設計や工事を行いましょう。
評点を診断するのは専門家
耐震診断を行うのは、「耐震技術認定者」という資格を持つ専門家が行います。耐震技術認定者は、特定の有資格者しか取得できない資格です。
知識と経験が豊富でなければ耐震診断ができないため、有資格者しか耐震診断を行えません。耐震診断の評点を確かめたい方は、耐震技術認定者が在籍している住宅リフォーム事業などに相談しましょう。
耐震診断が義務付けられている建物
「建築物の耐震改修の促進に関する法律」により、耐震診断が義務付けられている建物があります。
対象となる建築物の1つは、「要緊急安全確認大規模建築物」です。1981年5月31日以前に建築確認済証が交付された建物で、避難する際に特に配慮が必要な方が利用する施設や不特定多数の方が利用する建物が対象となります。要緊急安全確認大規模建築物には、病院や学校、老人ホームや旅館などが該当します。
また、「要安全確認計画記載建築物」に該当する建物も耐震診断が義務付けられています。1981年5月31日以前に建築確認済証が交付された庁舎など、大規模な震災があった場合に公益上利用が必要となる建物が対象です。
要緊急安全確認大規模建築物と要安全確認計画記載建築物に該当する建物は、耐震診断の結果を各自治体に報告する必要があります。
耐震診断にかかる費用の相場
木造住宅の耐震診断の費用は、壁などを剥がさない一般的なチェックで1棟120,000~250,000円ほどが相場です。より精密な耐震診断を行う場合や、建物の状態や規模によって耐震診断の方法が異なる場合は、相場よりも多くの費用が発生する可能性があります。
鉄筋コンクリート造の建物は、1平方メートルあたり1000〜2,500円が相場です。鉄骨造の建物では、1平方メートルあたり1,700〜2,400円が相場なので覚えておきましょう。
但し竣工時の一般図・構造図が存在し、完了検査済みの建物であることが証明可能な場合で、
現地調査費用も含んだ料金です。
建物の意匠図や構造図がない場合はそれらの図面を復元する必要があります。現地調査項目が多くなり図面作成も必要となりますので、上記の平方メートル単価を上回ることになります。
耐震診断にかかる費用は決して安い金額ではないため、どのような方法で診断すべきか、専門家とよく相談してから実行することをおすすめします。
耐震診断で評点1.0をクリアする方法
耐震診断では、評点1.0以上の結果を得るのが目標になります。建物の安全性を高めるために、評点1.0以上をクリアする3つの方法を紹介します。
建物全体を耐震リフォームする
家など建物全体をリフォームし、耐震強度を高めて評点を上げる方法があります。全体的にリフォームすれば、万が一大きな地震があっても倒壊の危険性が低くなるので安心して過ごせるのではないでしょうか。
ただし、耐震リフォームを建物全体に施すには多額の費用がかかります。予算が少ない方は、ほかの方法で評点1.0以上をクリアしましょう。
建物の一部を耐震補強する
部分的に耐震補強することで、評点を上げられる可能性があります。建物によって補強が必要な部位がそれぞれ異なるので、まずは耐震診断を行って状態を確認することからはじめましょう。
基本的に、耐震診断の評点が低いほど耐震リフォームにかかる費用は高くなります。予算内で建物を補強したい方は、専門家に相談しながらどの部分をリフォームするかを決めてはいかがですか。
耐震補強の優先順位
耐震補強の予算が限られている方は、優先順位の高い部分から順次リフォームを行いましょう。基礎のひび割れを補修したり、耐力壁を追加したりと補強が必要な部分から耐震補強をすると予算が立てやすくなります。
水回りで腐敗や劣化が進んでいる部分や、無筋基礎の鉄骨化なども優先順位が高い補強工事です。耐震診断の結果によって補強すべき部位の優先順位が異なるので、気になる方はさっそく検討してみてはいかがでしょうか。
耐震診断を受けることをおすすめする建物の例
耐震診断や補強工事を検討していない方も、以下の3つに該当する建物はきちんと専門家に診てもらうことをおすすめします。要点を確認し、耐震診断を受けるかどうか判断してください。
2000年以前の建物
2000年に宮城県や阪神で起こった大震災をきっかけに、建築基準法が改正されました。2000年以前にも当時の耐震基準に則って建築がされてきましたが、現在の耐震基準を満たしていないケースが多く見受けられます。
2000年以前に建築された建物は大規模な地震に耐えられない可能性があるので、耐震診断を受けることをおすすめします。2000年以降に建てられた住宅も、設計によっては1階部分が潰れてしまうといった被害もあるため、心配な方は念のために耐震診断を受けてみてください。
設計図と実際の間取りが違う建物
保管されている建物の設計図と実際の間取りが違う場合、違法建築の可能性があります。建物の規模が設計図よりも大きく耐震強度が低かったり、各市町村の検査を受けていなかったりと施工不備があるかもしれません。
設計図と実際の間取りが違う方は、安心を得るためにも耐震診断を受けておきましょう。
過去に増改築した建物
増改築をしたことがある建物は、壁や柱など建物の構造で必要な部分をリフォームの際に抜いている場合があります。過去に増改築をした建物は耐震強度が足りていない場合があるので、気になる方は耐震診断を受けましょう。
特に2000年以前に増改築した建物は、耐震強度が足りていないケースが多いので注意が必要です。リフォームや耐震補強を検討している方は、この機会にぜひ耐震診断を受けてみてください。
耐震診断の評点を参考にリフォームや補強を検討しよう
耐震診断の評点は、大きな地震に建物がどれくらい耐えられるかといった大切な基準です。近年は東日本大震災や熊本地震、北海道胆振東部地震など大きな地震に見舞われ、多くの方が住宅の耐震補強に関心を持っています。
万が一、震災が起きても被害を最小限で抑えるために、耐震診断を行って安全性を確かめてみてはいかがですか。相場を参考にし、この機会に建物に合った耐震診断を受けてみましょう。