耐震改修の補助金とは|必須条件や申請に必要な手続きなどを解説

耐震診断を受けて耐震性が弱いと判断された建物は、耐震改修を行う必要があります。耐震改修の費用相場は、全体の場合は100〜150万円ほどです。しかし、一定の条件を満たしていれば、国や地方自治体の補助金を受け取れる場合があります。

この記事では、耐震改修や補助金を受けるときの条件や申請方法などについて詳しく解説していきます。

目次

耐震改修が必要な建物は?

耐震改修が必要な建物は?

耐震改修とは、耐震性に問題があると判断された建築物が行うべき補強工事をいいます。従ってすべての建物で耐震改修が必要なわけではありません。

また耐震診断を行わなくても耐震改修が必要な建物もあるため、建造物の保有者は耐震性について正確に把握しておかなければいけません。耐震改修が必要になるのは、以下のような建造物です。

耐震診断調査で問題があるといわれた場合

耐震診断を行った結果、耐震性に問題がある建造物と判断された場合、耐震改修を行います。1981年5月31日以前に工事に建築確認済証が交付された、不特定多数の人や避難弱者が利用する規模の大きい建造物について、耐震診断は義務化されています。

特定建築物

RC造またはS造等で3階以上の高さがあり、延面積が1,000平方メートル以上のオフィス用のビルやマンション、百貨店、病院、劇場など不特定多数の人が利用する特定建造物は、耐震診断を行い、耐震性が不足していると判断された際は現行の耐震基準をクリアするよう耐震改修を行う必要があります。

経年劣化が著しい建物

木造建物の経年劣化とは、主に構造木材の腐朽のことを指します。鉄骨造の場合は、主に鋼材の錆びによる強度の低下のことを指します。鉄筋コンクリート造の建物の場合は、コンクリートの中性化や、鉄筋の腐食、ひび割れ、漏水、強度の低下などの現象として現れます。

これらの経年劣化が著しい建物は、計算上は耐震性を満足していたとしても、実情は耐震性が大幅に低下している可能性がありますので耐震改修を行う必要があります。

耐震改修の種類

耐震改修の種類

耐震改修にはいくつかの種類があります。耐震診断の結果を踏まえて専門家と相談しながら、地震が来ても建造物が倒壊しない十分な強度を保てるよう、最適な改修工事を行う必要があるでしょう。

基本的には、耐震改修工事はその建造物を使用しながら行うケースがほとんどです。

耐震補強

もっとも一般的な耐震改修が耐震補強です。耐震補強工事は、耐震壁の増設や増し打ち、袖壁の増設、ブレースの増設、柱の鋼板巻き、炭素繊維巻きでのせん断耐力の向上や耐震スリットの設置などを行います。

免震補強

免震補強は、建物を免震構造化して耐震の安全性を高める工事です。上部の構造の補強をほとんどせずに耐震性能を確保できます。 既存の建物の基礎部もしくは中間部に新たに免震層を作ります。これにより地震が起きたときの建物の揺れを大幅に低減できます。

制震補強

制震補強は、建物に制振ダンパーを取り付けて地震のエネルギーを吸収し、揺れを低減させる方法です。制振ダンパーは、主に既存の建物の柱や梁で囲まれたフレームなどに取り付けます。 建物の架構に作用することで、地震の力を抑えます。

耐震改修の費用相場

耐震改修の費用相場

耐震改修費用の相場を見ていきましょう。建物の造りや材質、どのような耐震改修をどの部分に行うかなどで改修費用は異なります。

また、依頼する業者や建物がある地域によっても費用は変わります。ここでは、木造住宅の費用相場を紹介します。

100〜150万円が一般的

耐震改修工事の半数以上が、187万円以下で行われます。もっとも多いのが100万〜150万円です。耐震診断を受けることで、より詳しい耐震改修費用の見積もりが出せます。

耐震改修を行う部位ごとの費用相場も紹介しましょう。

外壁は13〜15万円程度

外壁の耐震改修工事費の相場は、幅910ミリメートルで13万〜15万円です。外壁側から構造用の合板などを使い補強します。外壁の耐震改修は、リフォームとあわせて行うと料金が安くなる場合があります。

リフォームと耐震改修を検討しているなら、一度に済ませた方がコストを抑えられるケースがあるので、業者に相談してみましょう。

内壁は9〜12万円程度

内壁の耐震改修工事は、9万〜12万円です。室内の側や押し入れなどから構造用合板で補強を行います。外壁よりも作業がしやすいこともあり、料金は少し低めになっています。内壁の耐震改修もリフォームと同時に行うことで単価を下げられる場合があります。

屋根は1.5〜2万円

屋根の耐震改修は使用する葺き材によっても工事費が異なりますが、相場として1.5万〜2万円です。スレートなどを使用する方が、鋼板へ葺き替えるよりも費用が安くなります。

基礎は4〜5.5万円

基礎工事を行う場合、費用相場は4万〜5.5万円です。耐震壁を新設したり、無筋コンクリートへ増し打ちして補強したりする工事を行います。増し打ち補強よりも新設基礎工事の方が料金は高額になります。

耐震改修工事費用の計算法

耐震診断を受けなくても、延べ面積からおおよその耐震改修工事費を計算できます。建物の状況によって工事費は差が出ますが、計算法を知っていれば自分で工事費の目安を把握できます。

平家建ての木造住宅
12.0 × 延べ面積(平方メートル)0.56=耐震改修工事費用

2階建ての木造住宅
12.1 × 延べ面積(平方メートル)0.56=耐震改修工事費用

3〜5階建ての共同住宅
43.8 × 延べ面積(平方メートル)0.47=耐震改修工事費用

6階建て以上の共同住宅
17.2 × 延べ面積(平方メートル)0.65=耐震改修工事費用

参考:耐震改修工事費の目安|国土交通大臣指定耐震改修支援センター・一般財団法人日本建築防災協会
https://www.city.ayase.kanagawa.jp/ct/other000053700/taishinkaishuukoujihinomeyasu.pdf

耐震改修の補助金とは

耐震改修の補助金とは

耐震改修を行うとき、補助金を受け取れる場合があります。補助金には、国から支給されるものと地方自治体から補助が出るものがあります。耐震改修を行う建物を管轄する地域の自治体にも確認するといいでしょう。

国の耐震対策緊急促進事業

国が支給する補助金は、耐震診断が義務付けられている建築物の所有者が耐震診断や耐震改修工事を行う際に発生する費用の一部を助成するものです。また、超高層建築物などの所有者が耐震診断や耐震改修工事を行う場合にも適用されます。

地方自治体に補助制度がある場合も

地方自治体の補助金は、それぞれの自治体によって対象となる建造物や補助の割合が異なります。耐震改修を行う建物がある地方公共団体に補助制度がある場合、国の補助制度とあわせて活用できるので、建造物所有者の負担が軽減されます。

補助金対象になる条件

補助金対象になる条件

各地方自治体の補助金を受けるには、いくつかの要件を満たしている必要があります。自治体により異なるので、詳細は問い合わせてください。

築年数

補助金制度があるほとんどの地方自治体で、補助金が受けられる建造物の築年数を定めています。1981年5月31日以前に建築確認済証が交付された建物は、補助金の対象となります。これは1978年の宮城県沖地震をきっかけに、1981年に建築基準法の耐震規定が大きく改正されたためです。

木造

木造軸組み工法を用いた2階建以下の建物が補助金の対象となります。ただし、自治体によっては伝統工法やツーバイフォー住宅も対象になることがあります。

建物の用途

用途は戸建て住宅を対象としています。賃貸住宅の場合は、所有者と居住者が異なるケースも多く、所有者が耐震診断や耐震改修を行うことが条件となります。

補助金を申請するときの流れ

補助金を申請するときの流れ

補助金を申請する際の流れを簡単に説明します。

補強計画の事前審査を受ける

まず、補強計画の事前審査を受ける必要があります。耐震改修が必要かどうか、行政による耐震診断を受けましょう。

補強計画の設計書・計画書を作成する

耐震診断の結果を踏まえて補強計画の設計書や事業計画書を作成します。交付の決定や工事契約は、補助金の申請手続きが通った後に行います。

完了報告書作成し耐震審査を受ける

耐震補強工事が終了し、一度費用を支払ってから完了報告書と耐震審査を受けて、耐震補強ができたかどうかのチェックを行います。補助金が支給されるのはその後になります。

補助金を受け取るためには、事業計画書が重要です。耐震設計や耐震工事だけではなく計画書の作成を請け負う業者もいるので、相談しながら申請手続きを進めましょう。

耐震改修の補助金は条件付き!まずは相談を

耐震改修の補助金は条件付き!まずは相談を

耐震改修は、耐震診断で耐震性や安全性に不安があると判断された建物の所有者が行うべきものです。一定の要件を満たした建物であれば、国や地方自治体から耐震改修工事の補助が受けられます。

地方自治体の補助金対象は、それぞれ異なるので管轄の自治体に事前に補助金が出るか確認しましょう。

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