耐震基準適合証明書とは?申請方法や取得のメリット、注意点について解説

当該建築物の耐震性を精査する耐震診断により基準を満たしていた場合には、耐震基準適合証明書を取得できます。自動的に取得できるわけではない耐震基準適合証明書をわざわざ取得する背景には、その手間を上回るメリットがあります。時間や費用も要する耐震基準適合証明書の取得目的や申請方法、注意点についても触れながら解説していきます。

目次

耐震診断における耐震基準適合証明書とは何か

耐震診断における耐震基準適合証明書とは何か

建築物が十分な耐震性を満たしているか見極めるためには、耐震診断が欠かせません。耐震診断の結果、一定条件をクリアしていれば耐震基準適合証明書の取得が可能となっています。耐震基準適合証明書とは、耐震診断においてどのような役割を持つものなのか解説していきます。

耐震基準の証明書

耐震基準適合証明書は、当該建築物が耐震基準を満たしている事実を証明する書類のことです。
耐震基準適合証明書を取得するには、まず耐震診断を受ける必要があります。耐震診断により算出・判定される建物の「上部構造評点」が1.0以上の場合に、耐震基準適合証明書が発行されます。

耐震基準適合証明書の申請方法

耐震基準適合証明書の申請方法

耐震基準適合証明書は耐震診断を受けたからと言って自動的に発行されるものではありません。取得するためにはいくつかの手続きを行う必要があります。取得完了までに一定期間かかるので、スムーズに手続きを行うためには申請方法や流れ、取得に必要な費用についてなどをあらかじめ把握しておくことが重要でしょう。以下では、耐震基準適合証明書の申請にあたって押さえておくべき概要について説明します。

発行の申請者について

平成17年度に改正された税制では耐震基準適合証明書発行の申請者は売主とされていたため、買主が売主に対して発行申請を依頼する必要がありました。しかし、現在は買主・売主どちらも申請が可能となっています。耐震基準適合証明書を取得することで得られるメリットは買主側の方が多く、かつ円滑に手続きが進むため、買主側の発行申請が多い傾向にあります。

発行者と発行先

耐震基準適合証明書は、建築士事務所登録済の事務所所属の建築士であれば発行できます。ただし一級建築士のみ設計、または工事監理ができる建築物においては、一級建築士による発行が必須となっています。発行先は、以下の通りです。
・指定確認検査機関
・登録住宅性能評価機関
・住宅瑕疵担保責任保険法人

参考:【様式】耐震基準適合証明申請書・仮申請書(2022年4月~)※記入例 |国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001320204.pdf

申請に必要な書類

耐震基準適合証明書の発行申請には、以下の書類が必要です。
・耐震基準適合証明申請書仮申請書
・検査登記事項証明書写し、または建物登記事項証明書の写し
・物件状況等報告書
・販売図面(間取り図)
・台帳記載事項証明書、または検査済証の写し
検査済証は2000年以降に発行が義務化されたため、2000年以前に建築された建物では存在しないケースもあります。その場合は台帳記載事項証明書を用意しましょう。

取得の流れと必要な期間

耐震基準適合証明書取得までの流れは以下の通りです。
1.建築士への耐震診断における相談
2.耐震診断の依頼(申請者は耐震基準適合証明書仮申請書を建築士宛に発行する)
3.現地調査
4.耐震診断実施
5.代金支払い
6.建築士が耐震基準適合証明書を発行する
耐震基準適合証明書は、申請から取得までに1か月程度かかります。なお、耐震基準適合証明書の有効期間は取得日ではなく現地調査日から2年間なので注意しましょう。

耐震基準適合証明書の取得費用相場

耐震基準適合証明書の取得が完了するまでにかかる費用相場は、15万円程度です。内訳の目安は耐震診断でおよそ10万円前後、発行でおよそ5万円前後となっています。

耐震基準適合証明書を取得する際の注意点

耐震基準適合証明書を取得する際の注意点として、古い建物で耐震基準適合証明書を取得したい場合には補強工事が必要になる可能性が高いことが挙げられます。築年数が経っている建物は耐震基準を満たしていない可能性が高く、補強工事完了までにも半年以上の期間を要することがあります。さらに、下記で解説する住宅ローン控除や各種減税で節約できる金額よりも、補強工事にかかる費用の方がかかる場合もあるため押さえておきましょう。

また、耐震基準適合証明書を取得できても、控除・減税対象の条件を満たしていなければ適用外となってしまうケースもあるため注意が必要です。

耐震基準適合証明書を取得することで得られるメリットとは?

耐震基準適合証明書を取得することで得られるメリットとは?

耐震基準適合証明書を取得することでいくつかのメリットが得られます。以下で解説していきます。

住宅ローン控除を受けられる

耐震基準適合証明書を取得済みの建物を購入した場合、登記簿上の建築日付が1982年1月1日以降の家屋であれば、一定期間住宅ローン控除の対象となります。「所得税の住宅借入金等特別控除」という名称の制度で、納税者の負担軽減を目的とし、借入金の一定割合が所得税額から控除されます。所得税額で控除しきれなかった場合には、上限を136,500円として住民税から控除され、10年間で最大200万円の住宅ローン控除が受けられます。

中古物件にかかる登録免許税の減税

中古の土地や建築物を取得すると自分の権利証明のため登記(所有権移転や抵当権設定)をしますが、その際に登録免許税が発生します。所有権移転を行う前に耐震基準適合証明書を取得することで、登録免許税の減税を受けられます。

個人が減税措置なく住宅を取得した場合の登録免許税は、土地が固定資産税評価価格×2.0%(2023年3月31日までは1.5%)、建物が固定資産税評価額×2.0%です。一方で、軽減措置が適用されると、登録免許税は固定資産税評価額×0.3%(2024年3月31日まで)となります。

また、買取再販で取り扱われる物件を個人が取得した場合、床面積50平方メートル以上の家屋であれば木造住宅で築20年以内・マンションで築25年以内という築年数要件を満たすと、特例措置により登録免許税債権額の0.1%になります。万が一築年数をオーバーしている場合でも、耐震基準適合証明書を取得していれば軽減税率0.1%の適用が可能となります。

登録免許税の減税措置を希望する場合は、所有権移転登記前に各市区町村から住宅家屋証明書を取得しておかなければなりません。その際、築年数が20年以上経っている旧耐震基準の戸建ての住宅家屋証明書を取得申請するには、各市区町村窓口に耐震基準適合証明書の提出義務があります。購入物件の築年数や耐震基準を把握した上で、決済日に先立ち耐震基準適合証明書を取得しておくなどの注意が必要です。

中古物件にかかる不動産所得税の減税

不動産取得税とは不動産を取得した時にのみ課税され、納める税金のことです。土地の場合は、45,000円、または敷地1平方メートル当たりの価格×住宅床面積の2倍(1戸につき200平方メートルが限度)×3%、建築物の場合は築年数によって変動します。登記簿上の建築日が1982年1月1日以前の中古物件を取得した場合には、耐震基準適合証明書の取得により不動産取得税の減税措置を受けられます。1982年1月1日以降に登記された不動産であれば、耐震基準適合証明書はいりません。

また、床面積が50平方メートル~240平方メートルの居住用物件で1982年1月1日よりも前に建築された住宅であっても、耐震基準適合証明書を取得すれば住宅価格から一定額の控除が受けられます。

耐震基準適合証明書取得のメリットを押さえて、賢く控除を受けよう

耐震基準適合証明書取得のメリットを押さえて、賢く控除を受けよう

耐震基準適合証明書は取得のためにかかる期間や費用を考慮しても、控除や減税措置など手間を上回るメリットが期待できます。スムーズかつ安全に耐震基準適合証明書を取得するためには、申請方法や発行先などをあらかじめ把握しておくことが重要でしょう。複雑な手続きが多いため、中古住宅取得の際には建築士への相談・耐震診断の実施など必要な工程を経て、慎重に手続きを進めてください。

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