石灰石骨材、膨張材、収縮低減剤の使用における乾燥収縮ひび割れの低減効果について解説

コンクリートに生じる乾燥収縮ひび割れの対策について、調合段階においては使用する骨材を石灰石とする、混和材として膨張材を使用、混和剤として収縮低減剤を使用する方法があります。
ここではこれらの対策の概要とその低減効果の比較について解説します。

目次

石灰石骨材とは

石灰石は炭酸カルシウム(CaCO3)を主成分とした鉱石で、このうち粒度の大きいものが骨材として使用されます。

石灰石骨材が乾燥収縮ひずみを抑制するメカニズム

石灰石を骨材としたコンクリートの収縮ひずみは産地や物性によらずほぼ同等で、砂岩等他のものを骨材としたコンクリートの収縮ひずみよりも大幅に小さい値となります。骨材の種類が乾燥収縮に与える影響の要因としては密度や吸収率よりも、骨材自身の収縮の影響が大きく、骨材の収縮ひずみとコンクリートの乾燥収縮ひずみは正の相関関係があります。化学変化レベルにおけるメカニズムはまだ明確になっていませんが、石灰石を骨材とした場合骨材自身の収縮ひずみが抑制され、結果としてコンクリートの乾燥収縮ひずみも抑制されます。

膨張材とは

膨張材とは、セメント及び水と共に練り混ぜた後、水和反応によってエトリンガイト(3Cao・al2O3・3CaSO4・32H2O)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)などを生成し、コンクリートやモルタルを膨張させる混和材のことです。

膨張材が乾燥収縮ひずみを抑制するメカニズム

膨張材を入れたコンクリートの水和反応時に生じる水酸化カルシウムやエトリンガイトが空隙を残しながら結晶を生成するために、コンクリートやモルタルが体積膨張します。
この初期の体積膨張がその後のコンクリートの収縮を相殺することにより、結果として乾燥収縮ひずみが抑制される形となります。

収縮低減剤とは

収縮低減剤とは、混和剤の一種でコンクリートの乾燥収縮や温度変化に伴う収縮ひずみやひび割れを低減するためのものです。

収縮低減剤が乾燥収縮ひずみを抑制するメカニズム

セメントの水和反応により生成されるセメント硬化体の中には毛細管空隙が無数にあり、コンクリートが乾燥するまではそれらの空隙の中は水で満たされています。乾燥に伴い毛細管空隙内の水が蒸発する際に、水の表面張力が空隙内の壁面を引張りコンクリートが収縮してひび割れが発生します。そこで収縮低減剤を使用すると、水の表面張力が小さくなるため引張力の発生を防止し、乾燥収縮の発生を抑制することができます。

石灰石、膨張材、収縮低減剤の収縮低減効果

以下表に石灰石、膨張材、収縮低減剤の選定の際の参考となる一般的な条件化における乾燥収縮ひずみの定量的な低減効果の目安を示します。

対策no使用する材料対策の具体的内容期待される効果
 ①石灰石骨材石灰石骨材への骨材置換600~700×10^-6の実現
 ②膨張材膨張材を標準量使用膨張材を使用しない場合より150×10^-6以上の低減
 ③収縮低減剤収縮低減剤を標準量使用収縮低減剤を使用しない場合より15~30%の低減

コンクリートの乾燥収縮率の級と目標とする乾燥収縮率の上限値

乾燥収縮率の級は目標とする乾燥収縮率の上限値によって以下のように定められています。乾燥収縮率800×10^-6は現在市販のフレッシュコンクリートの特性値として標準的な数値として考えられているものです。

乾燥収縮率の級目標とする乾燥収縮率の上限値
標準800×10^-6
高級650×10^-6
特級500×10^-6

乾燥収縮ひずみの目標品質を満足するための使用材料の組み合わせの例

実際のコンクリートの乾燥収縮ひずみに照らして、それよりも目標品質の高い2つのランク、すなわち高級仕様や特級仕様に相当する乾燥収縮ひずみを達成するために取り得ると考えられる材料の組み合わせの例を以下表に示します。

対象となるコンクリートの乾燥収縮ひずみ標準仕様 (650~800×10^-6)高級仕様 (500~650×10^-6)特級仕様 (500×10^-6以下)
800~1000×10^-6石灰石骨材 又は 膨張材 又は 収縮低減剤 により0~20%の低減(石灰石骨材+膨張材) 又は (石灰石骨材+収縮低減剤) 又は (膨張材+収縮低減剤) により20~35%の低減  石灰石骨材 + 膨張材 + 収縮低減剤 により35~50%の低減
650~800×10^-6低減0%石灰石骨材 又は 膨張材 又は 収縮低減剤 により0~20%の低減  (石灰石骨材+膨張材) 又は (石灰石骨材+収縮低減剤) 又は (膨張材+収縮低減剤) により20~40%の低減  
500~650×10^-6 低減0%膨張材 又は 収縮低減剤 により0~25%の低減

まとめ

石灰石骨材、膨張材、収縮低減剤の乾燥収縮抑制のメカニズムと定量的な低減効果について解説しました。これらは明確に乾燥収縮の抑制に対して効果がありますので、要求される仕様に応じて適切な対策を選択することが重要です。

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