構造種別と構造形式の違いについて、それぞれの特徴と法手続きにおける注意点についても解説

「構造種別」と「構造形式」は互いに似ている用語ですがそれぞれ意味は全く異なります。
ここではそれぞれの用語の意味と特徴、法手続きにおける注意点についても解説します。

目次

構造種別とは

「構造種別」とは、構造部材に用いる材料の種類による区分です。構造種別の種類を下記に示します。
・鉄筋コンクリート造(RC造)
・鉄骨造(S造)
・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
・木造(W造)
・アルミ造(AL造)
()内の略語で表すことも多いので覚えておきましょう。
日本ではW造、S造、RC造が構造種別のほとんどを占めます。よって以降はこの3種類について解説していきます。

構造種別ごとの特徴

以下は構造種別ごとの長所・短所を表でまとめたものになります。

構造種別W造S造RC造
コスト◎安い〇中間△高い
工期〇中間◎短い△長い
耐火性能△燃え代設計が必要〇耐火被覆が必要◎不燃性材料
建物重量◎軽い
(一般:3~4kN/㎡)
(耐火木造:4~5kN/㎡)
〇中間
(乾式床:4~6kN/㎡)
(湿式床:6~8kN/㎡)
△重い
(純ラーメンなど軽い場合:12~15kN/㎡)
(壁が多く重い場合:15~20kN/㎡)
経済スパン〇(3~4m程度)◎大(6~8m程度)◎大(6~8m程度)
解体の容易さ◎容易〇中間△大変
耐久性△メンテナンスによる〇さび止め塗装が必要◎高い
柱・梁の大きさ◎小(スパンが小さいので)〇中△大

構造形式とは

地震や風など水平力に抵抗する方法を「構造形式」と呼びます。文献によっては「架構形式」と定義している場合もあります。
種類としては主にラーメン構造、ブレース構造,耐震壁付きラーメン構造、ブレース付きラーメン構造、壁式構造があります。対角線に部材を入れて変形を防ぐ方法があり、この時入れる部材を「すじかい」または「ブレース」と呼びます。

構造形式ごとの特徴

構造形式にはそれぞれに特徴があり、採用する構造形式によって実現できる空間が異なります。
またX方向、Y方向で異なる構造形式を採用することも可能です。
以下は各構造形式と特徴を表でまとめたものになります。

構造形式純ラーメン構造ブレース付きラーメン構造
耐震壁付きラーメン構造
ブレース構造
壁式構造
耐震性確保の方法変形能力変形能力+強度強度
空間の自由度◎自由な間取り〇耐震要素による制約あり△自由度小
空間の大きさ◎大きい◎大きい△小さい
柱・梁の大きさ△大きい△大きい〇小さくなる傾向

確認申請手続き上の注意点

構造種別・構造形式によって必要な確認申請手続きが異なります。想定外の手続きが求められるとその影響は大きいので、構造種別と構造形式を決める際にはこの点も考慮する必要があります。
以下では確認審査機関と綿密に打ち合わせを行うべき例を挙げます。

木造3層スキップフロア

2層部分の1部に1.4mを超える空間を設けて階と見なされると、3階建てとなり、4号建築ではなくなります。つまり計算ルート1を要求され確認申請において計算書の提出が必要となります。

RC造ボックスカルバート

ボックスカルバート(並列した壁の上部・下部を水平材でつなぎ、ロ形の構造形式としたもの。壁を柱、水平のつなぎ材を大梁として考える構造)でも梁間方向に壁があり、計算ルート1の壁量を満足していれば計算ルート1に相当し適合性判定対象ではなくなります。
しかし、梁間方向に壁のない完全なボックスカルバートの場合は計算ルート3の構造設計になるので、適合性判定対象となります。
なお計算ルート3では柱梁接合部の設計が必要となるので、低層の住宅でも壁・床厚は250~300mm程度は必要となり、コンクリート強度も30N/mm2以上の高いものが必要となります。

RC造壁式+W造屋根

基本的にRC造壁式構造の屋根はRCでなければいけません。
(地上部分の各階の耐力壁などの水平断面積が一定値未満のもの|平成13年国交告1026号)
2階建て以上の建物で屋根を木造とする場合は計算ルート3を選択する必要があり、適合性判定対象となります。

階高3.5m以上のRC造壁式構造

2階建て以上の建物で階高3.5mを超えると、計算ルート3が要求されるので、適合性判定対象となります。

RC造純ラーメン構造

RC造純ラーメン構造で壁が全く存在しない場合、確認審査機関によっては計算ルート1ではなく計算ルート3が求められ適合性判定対象となる場合があるので、事前相談によって確認審査機関の見解を明確にすることが必要です。

まとめ

今回は構造種別と構造形式について説明しました。構造種別とは構造部材に用いる材料による区分で、構造形式とは地震や風など水平力に抵抗する方法のことです。
「構造種別」と「構造形式」の長所・短所を認識し、適切に組み合わせるとその建築にとって合理的な構造計画が実現できます。

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