建築基準法構造関連規定の改正の変遷について

建築基準法および建築基準法施行令は1950年に制定されて以来、社会のニーズに応じて幾度となく改訂されてきました。ここでは構造関連規定の改正の変遷について解説していきたいと思います。

目次

1900年~2000年

1971年の改正では、1968年十勝沖地震における鉄筋コンクリート造建物が受けた重大な被害を踏まえ、 柱・はり部材のせん断設計が強化され、1981年の改正では数年にわたったナショナルプロジェクトの成果に基づき新耐震設計法に向けて耐震設計手法が大幅に改正されました。また、1998年には1995年阪神淡路大震災以降における建築物の性能明示型設計へのニーズを踏まえ、性能設計に向けての大幅な改正が行われました。

主な改正内容
1920
1924
1950
1971
1981
1995
1998
2004
市街地建築物法 制定
市街地建築物法 改正
建築基準法 制定
建築基準法施行令 改正
建築基準法施行令 改正
耐震改修促進法 制定
建築基準法・施行令 改正
建築基準法・施行令 改正
 
設計震度 0.1
設計震度 0.2
せん断設計の強化
新耐震設計法
耐震改修の促進
性能設計
ストック時代対応

2000年(平成12年)以降

2000年(平成12年)に建築基準法第20条が改正され、従来の構造安全性を要求する記述から、構造安全性の確保のため政令で定める技術的基準への適合を求める記述に変更されました。これに伴い、同法施行令第3章の構造鑑定規定は、構造計算基準・構造方法基準のいずれについても、同法第36条に基づく基準から、第20条に基づく基準へと変更されました。

平成12年の政令改正及び告示の制定による仕様規定の明確化(平成12年6月1日施行)

関連法令・告示内容
平成12年5月31日建告第1459号・建築物の使用上の支障が起こらないことを確かめる必要がある場合及びその確認方法を定める件
平成12年5月23日建告第1352号(改正平成19年9月27日国交告第1227号)・木造軸組の釣合い良い設置の方法
平成12年5月29日建告第1388号(改正平成24年12月12日国交告第1447号)・建築設備の構造耐力上安全な構造方法を定める件
平成12年5月29日建告第1389号(改正平成27年1月29日国交告第1184号)・屋上から突出する水槽、煙突等の構造計算の基準を定める件
平成12年5月31日建告第1460号・木造の継手及び仕口(筋交い端部、柱の柱頭・柱脚、その他)の構造方法を定める件
平成12年5月31日建告第1456号(改正平成19年9月27日国交告第1229号)・鉄骨造の柱の脚部を基礎に緊結する構造方法の基準を定める件

くいの水平力に対する許容応力度計算の義務化(平成13年7月2日施行)

関連法令・告示内容
平成13年7月2日国交告第1113号・くいの水平力に対する許容応力度計算の義務化(せん断、曲げ引張などのくい体の許容応力度が告示で規定されたことによる)

平成19年6月20日施行の法令、告示改正による構造計算規定、仕様規定の明確化

関連法令・告示内容
法第20条、令第36条、令第36条の2、平成19年5月18日国交告第593号・構造計算ルートによる仕様規定の適用除外の制限(鋼材の接合、鉄筋の継手及び定着、鉄筋コンクリート造の柱の構造等)
・他
平成19年10月5日国交告第1274号・方向別に構造計算ルートを適用する場合の制限
平成19年5月18日国交告第594号・鉄筋コンクリート造耐力壁の開口による耐力低減の方法
・耐力壁のある建築物の剛接架構の応力割り増し
・4本柱等建築物の水平力に対する付加的検証
・屋上突出部分または外壁突出部分の応力割り増し
・片持ち部分の応力割り増し
・層間変形角の算出方法
・冷間成形角形鋼管を柱に用いた場合の計算方法
・部材のせん断設計時の応力割り増し方法
・搭状建築物の計算方法
昭和55年11月27日建告第1791号(改正平成19年5月18日国交告第595号、平成19年9月27日国交告第1226号)・塔状建築物の制限
・冷間成形角形鋼管を柱に用いた場合の計算方法
・鉄骨部材の幅厚比の制限(通達に基づいていた当面の緩和値の削除)
・部材のせん断設計時の応力割り増し方法
平成12年5月31日建告第1457号(改正平成19年5月18日国交告第598号、平成19年9月27日国交告第1230号)・限界耐力計算方法
(平成19年改正により、解析方法、地下部分の計算、安全限界変位の制限、安全限界時のせん断設計、塔状建築物の計算方法、減衰性を表す数値の計算方法、地盤状況に応じた加速度増幅率の計算方法が明確化)

平成23年5月1日施行の法令、告示改正による構造関係規定の合理化等

関連法令・告示内容
令第67条第1項、第73条第3項及び第77条5号、平成23年国交告第432号・鉄骨造の小規模建築物等の接合方法について、ボルト接合に加え、国土交通大臣の認定を受けた接合方法でもよいこととした
・構造耐力上安全であることが確かめられた場合の、鉄筋コンクリート造の柱に取り付けるはりの引張り鉄筋の定着長さ及び柱の小径についての緩和(計算基準は平成23年国交告第432号に規定)
(昭和55年11月27日建告第1791号、平成19年5月18日国交告第593号・ルート1の構造計算におけるせん断力の割増計算の取扱い
・ルート1の構造計算によって安全性が確かめられる建築物の緩和
・膜構造の建築物に係るルート1の構造計算の合理化

平成24年9月20日施行の法令、告示改正による既存不適格建築物に関する規制の合理化

関連法令・告示内容
令第137条の2関係、平成24年国交告第1365号(平成17年国交告第566号)・増改築部分の床面積の合計が基準時の延べ面積の2分の1を超える増改築についての制限の緩和
・令第137条の2第1号の追加
・令第137条の2第2号の追加
・令第137条の2第3号イの改正
平成24年9月26日付け国住指第2274号(平成18年国交告第184号別添)・構造耐力上主要な部分について、耐震診断の方法と同等以上の効力を有する方法として、新耐震基準を認定

平成26年4月1日施行の令第39条第3項新設及び平成25年国交告第771号の制定による特定天井に関する規定の導入

平成27年6月1日施行の法令改正、告示制定・改正による構造適判制度の見直し、構造計算基準の合理化(2-3の廃止)

平成28年6月1日施行の法令改正による木造伝統的工法に関する仕様の追加、既存不適格の特例の対象に超高層建築物(高さ60mを超えるもの)を追加

平成29年9月26日施行の法令改正による木造建築物における直交集成板、伝統的工法に関する基準の合理化等(平成29年国交告第867号)

平成29年6月5日施行の改正による膜構造の建築物の構造方法に関する技術基準の一部改正(平成29年6月5日国土交通省告示第611号)

平成31年1月15日施行の改正による一定規模の緩勾配屋根について積雪荷重の強化(平成19年国交告第594号の改正)

建築基準法構造関連規定の改正内容についての考察

改正内容は過去の自然災害における被害が原因で規定が厳格化されたものが多い一方で、技術の発達・社会のニーズに伴い規定が緩和されたものもあります。今までの傾向をふまえると、今後も数年に一度は基準法が改正されることになると思いますが、より良い社会の実現のためにバランスのとれた法改正が行われることを願っています。

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