建築基準法施行令 第81条で規定されている構造計算の内容と計算ルートとの関係は以下の表の通りとなります。
■構造計算の区分 令81条
種類 | 計算内容 | 備考 |
1.令第81条第1項 | 時刻歴応答解析 | 超高層建築物等 |
2.令第81条第2項第一号イ | 保有水平耐力計算 | ルート3 |
3.令第81条第2項第一号ロ | 限界耐力計算 | – |
4.令第81条第2項第二号イ | 許容応力度等計算 | ルート2 |
5.令第81条第3項 | 令第82条各号及び令第82条の4に定めるところによる構造計算 | ルート1 |
確認申請書第六面の[5.構造計算の区分]においては、採用した構造計算ルートに対応するものにチェックを入れて下さい。
規則1条の3による図書省略認定(型式認定とは異なる)の場合、告示823号によりルート1と同等とされているため、確認申請書第六面の[5.構造計算の区分]は「令第81条第3項」にチェックする必要があります。
時刻歴応答解析
建築物を質量・ばね・減衰でモデル化した上で、地表面に時間とともに変化する地動加速度を与え、建築物の各階の応答加速度、速度、変位を計算する方法です。高さが60mを超える超高層建築物はこの時刻歴応答解析を行うことが義務付けられていますが、これ以外の建築物においても、特殊な材料や構造方法等を採用するときに時刻歴応答解析が用いられます。
保有水平耐力計算(ルート3)
まず一次設計と言われる許容応力度に基づく計算を行います。
・地震力(一次設計用)を算定して、それにより構造耐力上主要な部分に生じる力を計算する
・上記の力と他の荷重・外力により生じる力とを組み合わせ、構造耐力上主要な部分に生じる短期の応力度を計算する
・計算した短期の応力度が当該部分の短期に生じる力に対する許容応力度を超えないように確かめる
次に大地震時の建築物の安全性等を確認するために二次設計を行います。保有水平耐力計算の二次設計は以下のことを確かめることが要求されています。
・地震力(一次設計用)に対し、各階の層間変形角が1/200(変形により建築物の部分に著しい損傷が生じるおそれのない場合は1/120以内
・各階の保有水平耐力が必要保有水平耐力以上
限界耐力計算
地震力を受けた際の建築物の各階の変形を精緻に算出し、それを元にしたより詳細な構造計算を行うことを基本としています。そのため、中程度及び最大級のいずれの地震力に関する検討においても各階の耐力とその時の変形を同時に確認することになるため、ルート1~ルート3のような構造計算規定の適用の区分を設けていません。
具体的には令85条の5の規定に基づき、以下のように行います。
・地震力の算定を行う
・稀に発生する地震に対する安全の確認を行う
・極めて稀に発生する地震に対する安全の確認を行う
許容応力度等計算(ルート2)
まず一次設計と言われる許容応力度に基づく計算を行います。
・地震力(一次設計用)を算定して、それにより構造耐力上主要な部分に生じる力を計算する
・上記の力と他の荷重・外力により生じる力とを組み合わせ、構造耐力上主要な部分に生じる短期の応力度を計算する
・計算した短期の応力度が当該部分の短期に生じる力に対する許容応力度を超えないように確かめる
ここまでは保有水平耐力計算と同様ですが、二次設計については以下のことを確かめることが要求されています。
・地震力(一次設計用)に対し、各階の層間変形角が1/200(変形により建築物の部分に著しい損傷が生じるおそれのない場合は1/120以内
・各階の剛性率が0.6以上
・各階の偏心率が0.15以上
・構造種別に応じた必要な靭性等を確保するための基準への適合
許容応力度計算とは概念が異なることに注意しましょう。
令第82条各号及び令第82条の4に定めるところによる構造計算(ルート1)
平成19年交告第593号の各号に示された要件を確かめた上で、令第82条第一号から第三号までの計算を行います。同告示において、鉄骨造については地震力の割増しや筋かい端部及び接合部の破断防止等を行うことを、鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造については一定以上の壁量・柱量を確保すること等を規定しています。
まとめ
建築基準法施行令 第81条で規定されている構造計算の内容について説明しました。新築においては上記の5つの計算方法のうちどれを選択しても構いませんが、合理的な構造設計を行う上ではその建築物に適した計算方法を選択することが必要です。