寒冷地に建つ建物を設計する際の注意点について

内陸盆地や東北、北海道などの寒冷地に建物を計画する場合は、土の凍上により基礎・1階
床が持ち上げられることがあります。ここでは寒冷地に建物を設計する際の注意点について解説します。

目次

基礎底面は凍結深度より下になるようにする

凍結深度とは

凍結深度とは「地面が凍結する深さ」です。土中の水分が寒冷地では凍ります。この凍結する深さを凍結深度といいます。凍結深度は寒冷地で定められており、凍結深度が決められている地域は、北陸、東北、北海道などです。北海道では、凍結深度=60cmは一般的で、中には100cm近い地域もあります。
冬の場合、地面の温度は外気温より暖かいことが多いです。そのため土中で氷点下を下回ることは滅多にありません。しかし、寒冷地では外気温が-20℃になる地域もあり、地面の温度も下がってしまうのです。つまり、外気温が低ければ低いほど、地面の下が凍結する深さも深くなります。
凍結深度より浅い位置を基礎底にすると、地面の水分が凍る過程で基礎が押し上げられ、建物が浮き上がる(持ち上げられる)可能性があるためです。水は氷に変わるとき、9%も体積が増加します。この膨張する際の力が、建物を押し上げる、又はコンクリートをひび割れさせる原因となります。
なお気温が下がり、地中温度が0°C以下になると、粘土質、ローム質地盤では霜柱ができ、この霜柱が成長して地表面が隆起する現象が「凍上」と呼ばれるものです。
ある文献によれば、-20℃になる氷の膨張する力は200~300MPa(20000kN/㎡)ほどになるそうです。この水から氷に変わる体積変化を利用して、コンクリート構造物を粉砕する技術もるほどです。

凍結深度の算出方法

各行政が観測や計測データに基づいて、凍結深度を定めています。設計する建物の建設地に該当する行政に問い合わせて確認すれば教えてもらえます。

基礎まわりに砂、砂利を入れ、排水をよくする

土間下に砂、砂利を入れ、排水をよくする

土間と地面の間に空間を設ける

土間の材料をアスファルトとする

寒中コンクリートにて施工を行う

寒冷地での冬季のコンクリート施工においては、JASS5の寒中コンクリートに関する記述を参考にし、初期凍害を防止するため寒中コンクリートとしての初期養生を行います。打設後の保温養生(ジェットヒーターによる加熱と外周部のシート張で風を防ぐ)を行うのが一般的ですが、凍結防止用混和剤(-10°Cまで対応可)の使用も考えられます。

(実務者のための積雪寒冷地建築技術資料I・II|日本建築士事務所協会連合会 1984.8)

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次