地球規模で深刻化している温暖化の対策として注目されているのが、太陽光発電設備です。太陽の熱を電気エネルギーに変えて使用できるエコなシステムで、さまざまな分野で取り入れられています。
しかし、今後太陽光発電設備が耐用年数を超えた場合の適正な処分方法についてはまだ議論の余地があり、廃棄だけではなくリサイクルやリユースすることが望ましいとされています。この記事では、太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドラインの詳細について詳しく解説します。
太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドラインの目的
環境省では、「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン」を作成しています。
深刻な地球温暖化が進む現在、地球規模で再生可能エネルギーを活用し、CO2削減の加速化・最大化を目指さなければいけません。
日本では再生可能エネルギー固定価格買取制度が導入された背景もあり、太陽光発電を取り入れる企業や住宅が大幅に増えています。このガイドラインは、太陽電池モジュールのリサイクル等の推進を目的として作られたものです。
参考：「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン（第二版）」について｜環境省
太陽光発電設備とは
太陽光発電は、太陽の日射を利用して電気のエネルギーを作り出すシステムです。自然界にあるエネルギーを使い、電気に変換して人々の生活に活かせるため、再生・持続可能なエネルギーとして以前から注目されています。
太陽光パネルに日射が当たることで発電できる仕組みなので、発電できるのは天気のいい日や日中に限られます。しかし、太陽の日射があるところで発電装置があれば、山や海など場所を問わずに利用できます。
太陽光発電設備のメリット
太陽光発電設備のメリットは、発電する過程で有害な排気ガスや二酸化炭素などを一切排出しない点です。クリーンなエネルギーで、地球環境に悪影響を及ぼす心配がありません。
また、太陽光発電設備で作られた電気を電力会社に買い取ってもらえるので、電気代を節約できます。電力会社による電気買取は、太陽光発電によって作られた電力を優先的に使用し、太陽光発電が不足したときだけ電力会社から電気を買い取る方法で行われます。
太陽光発電設備のデメリット
太陽光発電設備は、太陽の日射がなければ発電できません。そのため発電できるのは日中、そして天気のいい日に限られます。梅雨時や晴れる日が少ない地域などでは、太陽光発電設備を設置しても十分な電力が得られない場合があります。
また太陽光発電は、エネルギーの密度が1㎡あたり0.1～0.2kW程度と少ない電力しか取り出せない点もデメリットといえます。
パワーコンディショナーで一定電圧出力へ調整したり、蓄電池に充電して放電したりするなどの工夫がされていますが、安定した電源とはいえないでしょう。
太陽光発電設備等の撤去や処分ができる業者
太陽光発電設備に使われているものは、太陽光パネルのほかにパワーコンディショナー、電力量計があります。太陽光パネルの資材は、大きく分けてシリコン系と化合物系、有機物系があります。シリコン系の材料を使った太陽光発電は、古くから使われていて普及率も高くなっています。
太陽光発電設備は、メンテナンスフリーといわれていますが、一度取り付けたら半永久的に使用できるものではありません。パネルの使用年数が長くなれば劣化による発電量の低下も起こります。
一般的に太陽光パネルの耐用年数は25～30年、パワーコンディショナーの耐用年数は10～15年で、電力量計は10年以内にメーターを交換することが義務付けられています。
太陽光発電設備を撤去、処分できる業者は次のようなところです。
メーカー
太陽光発電設備を製造、販売したメーカーで撤去や処分を行ってくれます。太陽光発電設備は、設備の部品によって産業廃棄物と粗大ゴミに分かれます。ソーラーパネルを撤去する際には、感電や怪我などをする危険があるので、必ず専門的な知識のある業者に依頼しましょう。
太陽光発電設備を購入したメーカーと担当者の連絡先を控えておき、撤去や処分を考える場合は、連絡して相談してください。
建設業者
建設業者でも太陽光発電設備の撤去や処分を請け負っています。太陽光発電システムは、産業廃棄物です。産業廃棄物の処理は、法律によって最終的にゴミを処理場に出す排出事業者が行うべきと定められています。
そのため、太陽光発電設備を販売した業者、設置や解体に関わった業者が排出事業者となります。太陽光発電設備が設置された一軒家を購入した場合などは、建設業者に撤去や処分の相談をしてみましょう。
施工業者
施工業者も太陽光発電設備の撤去をしてくれます。使用している太陽光発電設備に不具合が起きたり故障したりして取り替える必要が出た場合や処分したい場合には、太陽光発電設備を設置した施工業者に連絡するといいでしょう。
リサイクル業者
家の建て替えやリフォームをするときに太陽光発電設備を撤去したい場合は、リサイクル業者に撤去作業を依頼して処分してもらってもいいでしょう。もし太陽光発電設備がまだ使える状態であれば、リサイクル業者がすべてまたは一部買い取ってくれる可能性もあります。
太陽光発電設備が正常に使えているけれど撤去を考えるなら、一度リサイクル業者に相談して見積もりを取るといいでしょう。
使用済太陽光発電設備の適正な処分方法は
すでに使用した太陽光発電設備を適正に処分する方法をお伝えします。環境省では使用済み太陽光発電設備でも、リユースやリサイクルが可能なものは適正な処分を行うことを推進しています。
環境に優しい自然エネルギーを利用するための太陽光発電設備でも、使用後の処分の仕方が整備されていないと、新たな環境問題が発生することになってしまいます。正規の業者に依頼して、正しく処分してもらう必要があります。
また太陽光発電設備を所有する場合は、太陽光発電の使用を終了するときに廃棄の費用がかかることも見込んでおかなければいけません。
リデュース
リデュースは、産業廃棄物の量を減らす取り組みをいいます。家庭における太陽光発電設備は、余剰電力買取制度が制定されてから一気に普及が加速しました。太陽光パネルの普及によって、今後は故障や破損による使用済みのパネルが増加の一途をたどります。
近年では、太陽光パネルを屋根材や手摺と一体化させた建材の一部として使える建材一体形や、太陽光パネルへ光を集めて効率を上げて電力を生産するCPVシステムを使った太陽光発電設備もあります。CPVシステムは従来のパネルの面積の約半分の設置で済みます。
従来とは別の素材を使ってリデュースに取り組んでいるメーカーも少なくありません。
リユース
使用済みのパネルでも、なるべく再利用ができるよう考えられているものもあります。新技術でパネルのガラスとセルを分離しやすくしてある太陽光発電設備は、ガラスとシリコンセルの間にあるEVAを、ガラスを砕かずに刃で切断して分離して回収できる仕組みになっています。
ガラス以外にも銀、銅なども回収してリユースが可能です。
リサイクル
太陽光発電設備をリサイクルすることもできます。太陽光発電設備からは、有用な金属やガラスを回収できます。
太陽光発電設備のリサイクル検討するときには、必ず適正処理が可能な産業廃棄物中間処理業者を調べて依頼してください。
熱回収
リサイクルができない太陽光発電設備の場合は、熱回収が望ましいとされています。熱回収は、産業廃棄物として太陽光発電設備を焼却した際に発生する熱エネルギーを回収して利用する方法です。
埋め立てよりも環境に配慮した方法といえるでしょう。
太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドラインに基づいた適正な処分を
太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドラインは、今後増えていく使用済みの太陽光発電設備の処分について書かれているものです。
産業廃棄物として処理するだけではなくリデュース、リユース、リサイクルに活かせる方法もあります。太陽光発電の使用を止めるときには、まずメーカーや建設業者、リサイクル業者などに有効な処分の仕方がないか聞いてみましょう。