太陽光発電設備は建築基準法の対象?ポイントを確認しよう

太陽光発電設備を家庭や事業所に設置する場合は、一定の条件を満たせば建築基準法上の建築確認が不要になります。ただし太陽光発電設備の下を建物のように使う場合は建築確認が必要ですし、日照権や高さ制限など建築基準法上の制限は守らなければなりません。太陽光発電設備が建築基準法の対象になった際の手続きを確認することも大切です。

目次

太陽光発電設備の建築基準法上の扱い

太陽光発電設備の建築基準法上の扱い

太陽光発電設備は、ソーラーパネルを住宅などの屋根に設置する形態が一般的です。その際、「太陽光発電設備は建築基準法の対象になるのか」という疑問が浮かびますね。結論から述べると、太陽光発電設備を設置する場所や用途により、建築基準法の対象か否かが変わります。
基本的に、屋根や屋上など建物の上に設置される太陽光発電設備は建築基準法の対象です。ただし、用途によっては建築確認が不要となります。地面に設置する場合も建築基準法が適用される場合がありますが、農地は例外的に農地法の対象です。

太陽光発電設備を設置する場所により建築基準法適用条件が変わる

太陽光発電設備はどのような場所に設置されるでしょうか。住宅や事業所なら、ほとんどは屋根か屋上の上に設置されます。これらの太陽光発電設備は建物に付随する「工作物」として扱われるため、建物と同様に建築基準法が適用されます。
一方で、企業の敷地内など余った土地に太陽光発電設備が設置される場合もあります。この場合は太陽光発電設備が建物の一部ではないため、原則として建築基準法は適用されません。ただし、高さが4mを超えると建築基準法上の工作物となり、確認申請が求められる場合があります。

地面に設置する太陽光発電設備は建築基準法対象ではない

太陽光発電設備を地面に設置すると、建築基準法ではなく「電気事業法」の対象になります。出力が50kW以上の太陽光発電設備は発電所として扱われる「電気工作物」、50kW未満ならば「一般用電気工作物」です。一般家庭や中小企業の太陽光発電設備なら、後者が該当するでしょう。
一般用電気工作物である太陽光発電設備を設置する場合は、まず保安規定を定めて経済産業省の産業保安監督部長に届け出ます。次に資格を持つ電気主任技術者を選任し、太陽光発電設備の保安管理に当たらせなければいけません。

屋根上の太陽光発電設備は建築基準法対象だが建築確認不要

地面ではなく屋根の上・屋上に設置される太陽光発電設備は「建築設備」となり、前述のように建築基準法が適用されます。ただし、平成24年(2012年)7月に通知された国土交通省の技術的助言により、一定の条件を満たせば太陽光発電設備の建築確認が不要となりました。
太陽光発電設備に建築基準法上の建築確認が必要ないのは、「架台下の空間に人が立ち入らない」場合です。つまり、太陽光発電設備自体が屋根になり、その下で人が過ごせる場合は建築確認が求められます。ただし、太陽光発電設備をメンテナンスするための立ち入りは例外です。

農地法対象の太陽光発電設備も建築基準法上の建築確認は必要ない

耕作放棄地など、使わなくなった農地に太陽光発電設備を設置して太陽光発電所とする事例が見られます。前述のように地面に設置される太陽光発電設備は建築基準法の対象外で、建築確認も不要ですが、農地に設置する場合は「農地法」が適用されます。
農地に太陽光発電設備を設置する場合は、市区町村の農業委員会への「農地転用許可」届け出が必要です。農地全体を転用して太陽光発電設備を設置できるほか、農地の一部に立てた撤去可能な支柱上に太陽光発電設備を設置し、農地で営農を続けることもできます。

太陽光発電設備の下を利用すれば建築基準法上の建築確認が必要

太陽光発電設備を設置する場所が屋根の上ではなく、農地以外の土地である場合も、建築基準法上の確認申請が必要な場合があります。太陽光発電設備の下を建物のように利用する場合で、駐車場・駐輪場に設けた屋根の上にソーラーパネルを設置する「ソーラーカーポート」が例です。
太陽光発電設備を載せた屋根は建築基準法上の「特殊建築物」です。建物同様に建ぺい率・容積率の範囲内に収め、風速や積雪量を考慮した構造安全性を満たして建築確認を申請する必要があります。自動車が格納される場合はガソリンが発火するおそれがあり、規制が厳しくなります。

太陽光発電設備設置で適合が必要な建築基準法上の項目

太陽光発電設備設置で適合が必要な建築基準法上の項目

屋根の上に設置され、人が下に入らない太陽光発電設備は建築確認不要ですが、建築基準法上の項目への適合は必要です。具体的には、太陽光発電設備の下の建物も含めて用途地域に応じた高さ規制を満たし、日影規制と斜線制限に違反しないようにする必要があります。
また、太陽光発電設備の荷重増加によって建物の構造耐力が不足してはいけません。太陽光発電設備の重さで建物が損傷してはいけないということです。

太陽光発電設備を設置できるのは建築面積の8分の1以内?

2011年に国土交通省が技術的助言を出すまでは、屋上がある建物に太陽光発電設備を設置する場合に制限がありました。建築基準法施行令第2条では、屋上の上に突き出した階段室などの面積が建築面積の8分の1以下ならば、高さ制限に算入しないとされています。
ところが、屋上の太陽光発電設備も階段室同様に扱われていたため、設置により階段室との合計で建築面積の8分の1を超え、階段室が高さ制限に違反する場合がありました。2011年以降は太陽光発電設備が屋上部分として扱われなくなり、建築基準法の「8分の1ルール」は対象外です。

用途地域による高さ制限

太陽光発電設備の設置場所が屋上か屋根かを問わず、用途地域が第一・第二種低層住居専用地域または田園住居地域の場合は、建築基準法上の高さ制限を満たす義務があります。高さ制限は10mまたは12mです。
たとえば、高さ制限が10mの土地に高さ9mの建物がある場合、その上に設置する太陽光発電設備の高さは1mを超えないようにする必要があります。

太陽光発電設備が建築基準法上の日照権を侵害してはいけない

建築基準法第56条には建物の「日影規制」があり、「日照権」とも呼ばれます。「建物が建っても、隣接する土地が一定時間太陽光を受ける権利」で、同法別表第4によると、土地や建物の種類によって2.5~5時間です。太陽光発電設備の設置で日照権を侵害しないよう注意を要します。
なお、太陽光発電設備がある建物の隣に新しい建物が建ち、日光が遮られる場合があります。平成30年11月15日の福岡地裁の判例によると、太陽光発電設備の設置者は「受光利益」の権利を有するものの、新しい建物が建築基準法に違反していない限りは撤去を請求できません。

建築基準法上の建築確認申請が必要な場合の手続き

建築基準法上の建築確認申請が必要な場合の手続き

屋上に設けた太陽光発電設備の下に人が立ち入れる場合や、ソーラーカーポートのように屋根状にする場合は、建築基準法上の建築確認が必要です。太陽光発電設備の建築確認申請は、確認審査機関との協議において高い専門性が求められるため、通常は一級建築士に依頼します。
まず自治体か指定検査機関に確認申請書を提出し、太陽光発電設備の着工後に中間検査を受けて、工事完了後に完了検査を受ける流れとなります。

自治体または指定検査機関への建築確認申請が必要

太陽光発電設備を設置する際の建築確認申請提出先は、都道府県と一部の市に設けられた建築主事、または民間の指定検査機関です。いずれに提出する場合も、役所の建築審査課で建築確認についての案内を受ける必要があります。
太陽光発電設備は建築基準法上の特殊建築物または建設設備に該当するため、調査報告書・建築計画概要書・見取り図などの提出が必要です。

確認申請を怠った場合の罰則は?

建築基準法第9条第1項によると、法令・法律に違反した建築物には施工の停止と除去などが求められます。建築確認申請を怠った太陽光発電設備も対象です。さらに建築基準法第98条第1項では、違反者には3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。
実際に建築基準法違反で逮捕・起訴され実刑を受けるのは非常に悪質なケースに限られますが、是正指導を受ける可能性が高いため、太陽光発電設備の建築確認は必須です。

建築基準法に適合する必要のある太陽光発電設備は建築設計事務所に相談しよう

太陽光発電設備は設置場所やその他の条件により建築確認申請の必要性や、適合が求められる項目が変わります。太陽光発電設備を導入する場合は建築基準法を熟知した建築設計事務所に相談するのが安心です。

太陽光発電設備が建築基準法対象か確認しよう

太陽光発電設備が建築基準法対象か確認しよう

エネルギー問題解決の期待される太陽光発電設備ですが、設置に際して建築基準法に違反すると罰則を科される可能性があります。太陽光発電設備を置く場所が地面か屋根・屋上か、下に人が立ち入るかなどを設置前に確認しましょう。
太陽光発電設備が建築基準法の対象か、建築確認が必要かどうか判断に迷う場合は、建築設計事務所などの専門家に依頼することをおすすめします。

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