太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度とは?対象者と手続きをチェック!

太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度とは、ソーラーパネルの廃棄によって生じる有害物質の処理に充てるため、お金を積み立てておく制度です。発電量が10kW以上でFIT制度などの認定を受けた事業者が対象で、売電収入から控除されて電力会社が積立金を管理します。積立期間はおよそ10年で、太陽光発電設備を廃棄する際に書類を提出すれば積立金が返ってきます。

目次

太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度は誰が対象になる?

太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度は誰が対象になる?

太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度とは、2022年7月から順次開始される積立金制度です。ソーラーパネルなどの太陽光発電設備には多くの有害物質が含まれており、廃棄の際に多額の費用がかかります。そのため、費用を払わず不法投棄される事例も少なくありません。

廃棄等費用積立制度の開始により、事業者は「電⼒広域的運営推進機関」に積立金を預かってもらうことで、廃棄費用の心配なく太陽光発電設備を運用できます。ただしすべての太陽光発電設備が廃棄等費用積立制度となるわけではなく、基本的に家庭用は対象外です。

発電容量10kW以上のFIT制度認定事業者が対象

廃棄等費用積立制度の対象になるのは、太陽光発電設備の発電容量が10kW以上で、FITまたはFIPの認定を受けた事業者です。住宅用の太陽光発電設備は10kW未満のものが多いため、産業用の太陽光発電設備が主な対象になると考えられます。

ただし、家庭用と産業用が区別されないため、仮に家庭でFIT・FIP認定を受けた発電容量10kW以上の太陽光発電設備を運用していれば、廃棄等費用積立制度の対象となります。反対に、事業所や工場等の太陽光発電設備でも、発電容量10kW未満ならば廃棄等費用積立制度は適用されません。

最短で2022年7月1日から積立開始

太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度は、2020年6月に成立した「再エネ促進法」に基づいて実施されます。適用が最も早い事業者は、2022年7月1日からが廃棄等費用積立制度の対象期間です。具体的には、2012年7月にFIT制度の認定を受けた太陽光発電設備が最短で適用されます。

同様に、2013年7月にFIT認定を受けていれば2023年7月1日というように、太陽光発電設備がFIT・FIP認定されてから10年後に廃棄等費用積立制度の対象になると考えて問題ありません。言い換えると、FITの固定価格・FIPのプレミアムが適用される20年間の終了前10年間です。

積立期間は調達期間のうち終了前10年間

太陽光発電設備による売電に関する制度のうち、FITは固定価格での買い取りを保証し、FIPは電力市場での売電価格に一定額のプレミアムが上乗せされます。FIT・FIPが適用される調達期間は発電容量10kW以上の場合20年間で、廃棄等費用積立制度の適用は終了前10年間です。

FITの調達価格と同様に、解体等積立基準額も年度が下ると安くなります。たとえば、2012年度にFIT認定を受けると調達価格は40円/kWhで積立基準額は1.62円/kWhですが、2021年度認定で発電容量10kW以上50kW未満の場合は調達価格12円/kWh・積立基準額1.33円/kWhです。

外部積立が原則だが認定されれば内部積立も可能

太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度では、原則として「推進機関」が積立金を預かります。これを外部積立と呼び、年金や分譲マンションの修繕積立金等と同様の方式です。ただし、特例申請が認められれば、太陽光発電設備の所有者自身が積立金を管理する内部積立も選択できます。

具体的には、太陽光発電設備が電気事業法上の事業用電気工作物で、事業者が発電事業者であり、外部積立と同額の内部積立が可能で、金融機関と内部積立に関する契約を結んで一年ごとに残高を公表する――などの条件を満たし、経済産業省に事業計画を提出する必要があります。

参考:

太陽光発電設備の廃棄等費⽤積⽴制度について|経済産業省

なっとく!再生可能エネルギー-固定価格買取制度|経済産業省資源エネルギー庁

廃棄等費用積立ガイドライン|経済産業省資源エネルギー庁

なぜ太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度が開始されるのか?

なぜ太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度が開始されるのか?

では、なぜ太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度が開始されるのでしょうか?経済産業省・資源エネルギー庁によると、再生可能エネルギーが主力電源となるためには、太陽光発電設備は事業者が責任を持って廃棄費用を確保しなければなりません。FITの調達価格にも廃棄費用が含まれています。

太陽光発電設備の想定廃棄費用は1kWあたり1~1.7万円です。しかし、2019年1月末のデータでは、容量20kW以上の事業者のうち約83%が廃棄費用を積み立てていませんでした。そこで2018年7月に廃棄等費用の積立が義務化され、廃棄等費用積立制度の開始につながったのです。

ソーラーパネルには多量の有害物質が含まれている

太陽光発電設備のうち、ソーラーパネルには主に鉛、セレン、カドミウムなど多くの有害物質が含まれています。いずれも自然界に存在する物質ですが、たとえば人が太陽光発電設備から流れ出た鉛を大量に摂取すると、胃腸・腎臓や脳神経の疾患を発症する可能性があります。

有害物質を直接摂取することがなくても、破損した太陽光発電設備の取り扱いには危険が伴います。たとえパワーコンディショナーなどの設備に接続されていなくても、太陽光パネルは光が当たっただけで発電し、近付いた人に感電する可能性があるためです。

参考:2040年、太陽光パネルのゴミが大量に出てくる?再エネの廃棄物問題|経済産業省資源エネルギー庁

廃棄費用を用意できず不法投棄する事業者が出るおそれもある

帝国データバンクによると、2016年には67件の太陽光発電設備関連企業が倒産しました。一方で総務省の調査では、同年に太陽光発電設備の不法投棄は確認されておらず、その後も大規模なソーラーパネルの不法投棄が報道されたことはありません。

ただし、懸念されるのは太陽光発電設備の「2040年問題」です。資源エネルギー庁によると太陽光発電設備の寿命は25~30年であり、FIT開始から約30年が経つ2040年頃に多量のパネル廃棄が予想されています。廃棄等費用積立制度の創設は、2040年頃の不法投棄を未然に防ぐことが目的です。

参考:太陽光発電設備の廃棄処分等に関する実態調査結果報告書|総務省行政評価局

太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度は適正処理を促進するもの

太陽光発電設備の不法投棄や最終処分場のひっ迫を防ぐため、国は事業者が適正な廃棄を行うよう促してきました。FIT制度の調達価格には太陽光発電設備の廃棄費用が含まれていますし、太陽光発電設備の製造・輸入事業者が産廃事業者に情報提供するようガイドラインを定めています。

太陽光発電設備を処理する最終的な責任は所有者にあり、廃棄・リサイクルに充てる費用も自ら準備すべきものです。ところが調査により60~80%程度の事業者が太陽光発電設備の処理費用を積み立てていないと判明し、適正処理促進のため設けられたのが廃棄等費用積立制度です。

参考:2040年、太陽光パネルのゴミが大量に出てくる?再エネの廃棄物問題|経済産業省資源エネルギー庁

太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度の利用手続き

太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度の利用手続き

太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度は発電容量10kW以上のFIT・FIP認定事業者が自動的に対象となるため、申し込み手続きは必要ありません。FIT・FIPの調達・交付期間20年のうち後半10年になると、電力会社から支払われる買取金額のうち、廃棄費用に充てる分が源泉徴収されます。

廃棄等費用積立制度の開始に際して申し込みは原則不要ですが、太陽光発電設備の所有者が自ら積立金を管理する「内部積立」を行うには経済産業省の認定が必要です。また、太陽光発電設備を解体するために積立金を取り戻すには、廃棄処理を証明する書類の提出が求められます。

参考:なっとく!再生可能エネルギー-再エネ特措法改正関連情報|経済産業省資源エネルギー庁

積立金は買取金額から控除され電力会社が管理する

廃棄等費用積立制度では、原則として太陽光発電設備による売電収入が電力会社から支払われると同時に積立が行われます。たとえば買取金額が13.2円/kWhで積立金額が0.66円/kWhならば、実際に入金されるのは12.54円/kWhです。

なお、FIPは卸電力市場価格にプレミアムを上乗せして売電できる制度ですが、プレミアム額が積立金額を下回って積み立てられない場合があります。その際は入金額からの控除が行われず、太陽光発電設備の所有者から推進機関へ積立金一年分の振り込みが必要です。

参考:太陽光発電設備の廃棄等費⽤積⽴制度について|経済産業省

積立金の取戻しには廃棄処理に関する資料が必要

廃棄等費用積立制度は早い事業者で2022年7月1日から対象となり10年間積立が行われるため、廃棄処理のための取戻しは早くとも2032年7月頃まで行われません。そのため実例は存在しませんが、廃棄処理やパネル交換のために積立金を取戻すには、証明できる資料の提出が必要とされています。

また、仮に取戻した積立金をすべて使っても太陽光発電設備を廃棄処分できない場合は、所有者自身が費用を負担しなければなりません。

太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度が再エネ普及を支える

太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度が再エネ普及を支える

FIT・FIP制度によって太陽光発電設備の所有者は売電収入を得ることができ、同時に再生可能エネルギーの普及に貢献してきました。しかし太陽光発電設備が寿命を迎えることが予想されるため、適正な大量廃棄に備える必要性が生じています。

廃棄等費用積立制度は、発電事業者にとって負担となることは確かです。一方で、太陽光発電設備の廃棄を保証することで新規設置を後押しするため、持続的な再生エネルギー普及に必要な制度であるといえます。

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