地盤調査結果から読み取る、建物周辺の地下水位の適切な判断方法

構造設計を行う上で地下水位の把握は、基礎底面に作用する浮力、地下外壁に作用する水圧、地震時の液状化対象層の設定に関係し、基礎の設計において非常に重要です。
ここでは地盤調査で得られる地下水位の適切な判断について解説します。

目次

地下水の定義

地下水は地下水面と帯水層の位置関係により、不圧地下水と被圧地下水とに分けられます。

地下水状態の模式図

帯水層とは

帯水層とは、地中の透水層において地下水によって飽和している地層のことを指します。
透水層とは砂や礫など粗粒の物質からなり、地下水が浸透しやすい地層です。
これに対して不透水層とはシルトや粘土からなり地下水が浸透しにくい地層です。
水を通さない緻密な岩盤類は非透水層と呼ばれることもあります。

不圧地下水とは

不圧地下水とは、帯水層中に自由地下水面を有する地下水で、自由地下水とも言われます。
構造設計を行う上で把握すべき「地下水位」とはこの不圧地下水のレベルを指します。

被圧地下水とは

上下二層の不透水層に挟まれた帯水層中に充填されており常時圧力のかかっている地下水です。被圧地下水の把握は構造設計において必要になることはほとんどありませんが、施工時における地盤掘削において、山留め壁の内外の水頭差により生じるボイリングの検討や、掘削底面が被圧地下水の揚圧力によって膨れ上がる「ばんぶくれ」などの検討においては必要になります。

地下水位の適切な測定方法について

ボーリング孔内で測定される水位を孔内水位と呼びますが、孔内水位は水位の求め方によりその意味は変わってきます。
設計に用いるための不圧地下水位として泥水位を用いるのは適切ではありません。
無水堀りにより測定される水位か、又は清水置換した孔内において人為的水位を変化させた後、平衡水位(水位変動がほぼ停止した段階の水位)により把握しなければいけません。
平衡水位を求めるためのボーリング孔を利用する方法では、水位測定用パイプを孔底に打ち込んで孔内水との遮水を行い、測定用パイプ内の水を清水に置換して測定を行います。被圧地下水の測定では、対象とする帯水層の上位の不透水層にケーシングを打ち込み、孔壁と水位測定用のパイプとの隙間で上下の流れを生じないように遮水を行う必要があります。

種類水位の求め方水位の解釈
無水堀りによる水位泥水を用いないで堀り進んだ時、孔内に地下水が流入し始めた深度粘性土中の場合は溜り水、砂質土中の場合は、不圧地下水位を示す
泥水位泥水を用いて削孔し、ボーリングが終了した後の安定水位孔壁にマッドケーキ(難水層の膜)ができるために値そのものは参考にならない 実際の水位はそれ以深と判断される
水洗い後の水位削孔後に泥水を清水に置換し、孔内を洗浄した後の安定水位 被圧地下水位の性格な測定には上位帯水層との遮水が必要洗浄が十分ならば砂質土中では不圧地下水、粘性土中では溜り水またはその下部の砂質土層の被圧地下水の水位を示す

まとめ

構造設計を行う上で、正しい地下水位を把握することは非常に重要です。泥水位は実際の水位よりも高いレベルにあるので、泥水位を設計水位として用いれば安全側の評価となります。ただ基礎が深い建物や地下を有する建物の場合、泥水位を設計水位として用いると厳しい設計条件となり不経済な設計となってしまいます。
従ってこのような場合は、地盤調査において無水堀りによる水位又は水洗い後の水位の測定を指示し、正しい地下水位を把握しておくことが必要です。

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