スクリューウエイト貫入試験(スウェーデン式サウンディング試験)の結果の評価方法について

スクリューウエイト貫入試験は深さ10m程度までの軟弱層を対象とするサウンディング方法です。装置及び操作が容易で安価で迅速に測定できるなどの利点があり、小規模な建物の地盤調査に通常採用されています。
ここではスクリューウエイト貫入試験の特徴、地盤調査会社に調査を発注する際の注意点、調査結果の判定法について解説します。

目次

スクリューウエイト貫入試験の歴史

スクリューウエイト貫入試験は、1900年代初期にスウェーデンの国有鉄道による路盤調査により採用され、その後各国に普及しました。日本では1980年頃から戸建て住宅の地盤調査方法として採用され、2001年には国土交通省告示1113号にて地盤の許容応力度の算定式が示されたことから戸建てを中心とする小規模な建物の地盤調査方法として一気に普及しました。
名称は以前は「スウェーデン式サウンディング試験」と呼ばれていましたが、対応国際規格ではスウェーデンという国名が付けられていないこと、日本では試験装置や試験方法が独自に発展し、対応国際規格とは異なるものとなっていることから、2020年10月26日付でJISが改定され規格名称は「スクリューウエイト貫入試験」へと変更になりました。同試験は建築業界では「SS試験」「SWS試験」とも呼ばれます。

試験の方法

試験の方法は手動、半自動、全自動方式があり、先端にスクリューポイントを取り付けたロッドに100kgfまでの荷重を加えて貫入量を計ります。貫入が止まったら、ハンドルに回転を加えて地中にねじ込み、1m当たり(換算)の半回転数Nsw(180°の回転を1回と数える)を測定します。また、試験時にロッドを伝わってくる音や貫入抵抗から砂質土あるいは粘性土等の判別も同時に行います。
原則として25cmごとに0.05kN~1kNの荷重Wswを加えた時の貫入量1mあたりの半回転数Nswを測定します。

地耐力qu(kN/㎡)、N値(回)の推定式

1m当たり(換算)の半回転数Nswの値は最終的には以下の要領で決定することが一般的です。
-Nsw≦100の場合:最も近い整数値
-100<Nsw≦500の場合:最も近い5の倍数
-Nsw>500の場合:最も近い10の倍数
地耐力qu(kN/㎡)の推定式は以下の通りです。
qu(kN/㎡)=0.030Wsw(N)+0.60Nsw(回)

N値の推定式は以下の通りです。
-砂質土、礫等の場合:N(回)=0.002Wsw(N)+0.067Nsw(回)
-粘土、粘性土の場合:N(回)=0.003Wsw(N)+0.050Nsw(回)
ここでのN値は柱状改良や地盤改良杭の設計に用いられます。

適用できない地盤

密な砂質地層、礫・玉石層や固結地層などではロッド周面摩擦の影響やスクリューポイントの摩耗の影響などによる試験のばらつきが大きく正確な結果が得られないことから、一般的にはこのような地盤では適用できません。

地盤調査会社へ発注するにあたっての注意点

地盤調査会社にスクリューウエイト貫入試験を発注する際の注意点について解説します。ここで誤った調査指示をしてしまうと、本来であれば不要な地盤補強を行う判断をしてしまうこともありますので注意が必要です。

基礎直下が粘土層やローム層の場合は土質試験も同時に行う

スクリューウエイト貫入試験は粘土層やローム層の場合、地耐力が過小評価されることがあります。従って基礎直下が粘土層やローム層の場合は不撹乱資料を採取し、ローム層であれば3軸圧縮試験、粘土層であれば一軸圧縮試験+圧密試験を行う必要があります。
ハンドオーガーボーリングであれば、比較的安価に不撹乱資料を採取することが可能です。
粘土層やローム層で土質試験を省略した場合、実際は十分な地耐力があるにも関わらず、スクリューウエイト貫入試験の過小評価された結果を受けて地盤補強を行う形となり、工事費が大幅に増加するような不経済な設計に至ることがあります。

試験位置

通常は中央1箇所+建物四隅4箇所の計5箇所行います。ただし四隅のうち1箇所又は2箇所のみ表層が軟弱で、その他については良好な場合は、補足点として建物の内側に1m程セットバックした位置で追加調査を行います。この補足点での調査結果が良好であれば、軟弱地盤の範囲は隅の1m程の範囲のみと想定されるので、地盤補強はこの部分のみで済ませることができます。この条件下で追加調査を行わない場合、最も悪い調査結果を設計に採用しなければいけませんので、結果として建物全面に地盤補強を行うこととなり、不経済な設計となってしまいます。
例えば以下の例では、当初の測定箇所の5点のうち、測点no1,no2,no4,no5は良好な結果で測定no3のみ軟弱な層という結果でした。その後測点no6,no7と建物中央に向け追加調査を行い、測点no7において良好な結果が得られたため敷地北側の1隅1.5m角程の範囲のみ地盤補強範囲としました。

杭や地盤改良等の地盤補強が不要となる条件

以下の3つの条件を全て満足すれば杭や地盤改良等の地盤補強は不要となります。

基礎底面から2.0mまで0.75kN以下、2.0m以深5.0mまで0.5kN以下の自沈層なし

国土交通省告示第1113号 (平成13年7月2日)(最終改正 平成19年9月 告示第1232号)によると「地震時に液状化するおそれのある地盤の場合…略…、 基礎の底部から下方2m以内の距離にある地盤にスウェーデン式サウンデイングの荷重が 1kN以下で自沈する層が存在する場合若しくは基礎の底部から下方2mを超え5m以内の距離にある 地盤にスウェーデン式サウンデイングの荷重が500N以下で自沈する層が存在する場合にあっては、 建築物の自重による沈下その他の地盤の変形等を考慮して建築物又は建築物の部分に有害な損傷、 変形及び沈下が生じないことを確かめなければならない。」
とあります。

これに対して「小規模建築物基礎設計指針」(日本建築学会)では、『基礎底面から2.0mまで
0.75kN以下』という形でやや緩和されており、国土交通省告示よりも優先してこちらの数値を用いて問題ありません。
理屈としては、告示の後半の『建築物の自重による沈下その他の地盤の変形等を考慮して建築物又は建築物の部分に有害な損傷、 変形及び沈下が生じないことを確かめなければならない』という文面が「小規模建築物基礎設計指針」に記されている内容に相当します。
また自沈層と判断された場合でも、不撹乱資料を採取し土質試験を行い得られた土質の結果に対して地耐力が接地圧を上回っていれば問題ありません。

地震時に液状化が生じない

スクリューウエイト貫入試験のみでは地震時に液状化を生じる地盤かどうかの判断ができません。従って液状化を生じる地盤かどうかの判断は、敷地内で追加のボーリング+液状化判定を行うか、近隣のボーリングデータを確認するか、近隣のハザードマップを確認するしかありません。これらの資料により地震時に液状化を生じないことを確認する必要があります。

GL-10m以深で圧密沈下が生じない

スクリューウエイト貫入試験は原則GL-10mまでの地盤までしか評価ができません。従ってGL-10m以深で圧密沈下を生じる地盤かどうかの判断は、敷地内で追加のボーリング+圧密試験を行うか、近隣のボーリングデータを確認する必要があります。

まとめ

スクリューウエイト貫入試験とは何か、地盤調査会社へ調査を発注する際の注意点、結果の評価方法について解説しました。簡易で安価にできる便利な調査方法ですが、土質試験等追加の調査項目の決定や、試験位置の決定については適切な基礎形式を決定する上で非常に重要です。

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