コンクリートの乾燥収縮ひび割れを減らすには、単位水量を減らすことが最も効果的と言われています。しかし最近の研究では粗骨材の種類によってひび割れリスクが大きく変わることが分かりました。ここでは粗骨材の違いによる乾燥収縮ひび割れのリスクの程度について解説します。
粗骨材とは
まず骨材とは、コンクリートの調合に必要な砂利や砂のことです。コンクリートは、セメント、水、骨材の3つの材料からつくります。セメントと骨材が密着し一体となることで高い強度を発揮します。粗骨材の定義は「5mm目ふるいに質量で85%以上留まるもの」で、100gの骨材を5mmふるいにかけて質量で85g残った骨材を粗骨材と定義します。一方全ての径が10mmふるいを通過し、5mmふるいを85%以上通過する骨材を細骨材といいます。
収縮ひび割れ発生のメカニズム
コンクリートの自己収縮と乾燥収縮に伴う変形が、内的あるいは外的に拘束されると、コンクリートに引張力が生じ、ひび割れが発生します。
自己収縮とは
自己収縮とはセメントの水和反応の進行によりコンクリートの体積が減少し収縮する現象です。水セメント比が小さいほど自己収縮は大きくなります。
自己収縮の中にも温度ひずみ、自己収縮ひずみ、膨張ひずみがあります。
乾燥収縮とは
乾燥収縮とは乾燥によるコンクリート中の水分の蒸発により、コンクリートの体積が減少し収縮する現象です。単位水量や水セメント比が大きい程乾燥収縮は大きくなります。
温度ひずみ発生のメカニズム
温度ひずみは収縮ひび割れの原因となる自己収縮の一種です。
コンクリートはセメントと水と骨材を練り混ぜて水和反応を生じることで形成されます。
水和反応に伴う水和熱によりコンクリートの温度が上昇します。コンクリートの温度が上昇するとコンクリート自体は膨張し内部拘束による温度応力が発生することで、この応力に伴う温度ひずみが生じます。
熱膨張係数が小さい粗骨材を用いれば自己収縮ひび割れを軽減できる
上述の通りコンクリートの温度上昇により温度ひずみ、自己収縮ひび割れが発生するので熱膨張係数が小さい粗骨材を使用すれば温度ひずみ、自己収縮ひび割れを軽減できます。
以下表は粗骨材の種類と熱膨張係数の数値をまとめたものになります。
結果としては、石灰岩やポルトランド石が小さく、砂利や珪岩は高めであることが分かります。
粗骨材の種類 | 熱膨張係数 (×10^-6/℃) -気中養生したコンクリート | 熱膨張係数 (×10^-6/℃) -水中養生したコンクリート | 熱膨張係数 (×10^-6/℃) -気中養生した湿潤コンクリート |
砂利 | 13.1 | 12.2 | 11.7 |
花崗岩 | 9.5 | 8.6 | 7.7 |
珪岩 | 12.8 | 12.2 | 11.7 |
粗粒玄武岩 | 9.5 | 8.5 | 7.9 |
砂岩 | 11.7 | 10.1 | 8.6 |
石灰岩 | 7.4 | 6.1 | 5.9 |
ポルトランド石 | 7.4 | 6.1 | 6.5 |
高炉スラグ | 10.6 | 9.2 | 8.8 |
膨張スラグ | 12.1 | 9.2 | 8.5 |
コンクリートの配合計画書において、粗骨材の種類と産地は必ず記載がありますが、以下のように「砕石」という記載のみで具体的な岩種の記載がないものがあります。このような場合は施工者またはプラントへ具体的な岩種を確認する必要があります。
まとめ
コンクリートの収縮には自己収縮と乾燥収縮があること、その自己収縮の1つである温度ひずみは熱膨張係数が大きいほど生じやすく、熱膨張係数が小さい粗骨材を使用すれば温度ひずみ・自己収縮ひび割れを軽減できることを説明しました。
粗骨材の特徴を十分理解した上でコンクリートの配合計画を立てることが重要です。